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弱者の足掻き
十三話 「依月」
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そも両親も死ななかったかもしれない。
 おっさんは正しく死んで、ガトーの影が出るのはもっと遅かっただろう。少なくとも白に至っては確実に俺が原因だ。

 俺が変えた。変えてしまった。その思いの重責は無くならない。
 どうすればよかったんだと、漏れかけた言葉が口から出る前に噛み殺して堪えた。

「自分が関わらなければ変わらなかった? 自分のせいで運命が変わった? テメェはいつ役者になった。自分は悲劇の主人公で関わった人の命運を決めてしまう――なんて、まるで自分が世界の中心の重要人物だと思い込んでるみたいだなぁおい。それが上から目線でなくて何だ言ってみろ。お前本気で自分が世界の中心だとでも思ってんのか?」
「そんな、ちが」
「自分を引き立てる舞台装置みたいに、オレはオレの命を軽く見た挙句偉そうにしてる奴が嫌いでぶっ殺したくなる。テメェごとき大したことねぇと思い知らせたくなる」

 おっさんの手がオレの顔を鷲掴みにする。ギリギリと力を込められ頭が軋む。おっさんは上から覗き込むように自分の顔を俺の顔に近づけ、俺の瞳を覗き込む。
 視線をずらせなかった。これから言われる言葉がどんなものか分かった。
そしてそれはきっと、俺が望んでいたものだ。

「変わるかクソボケ。テメェ如きが何かして変わるわけねぇだろ。隠れてちまちまやるしか能がないお前なんざ端役の小物だ。何したって運命何ざ変わらねぇよ。仮に変わったとしてもその時はオレが何度も死にかけたように、治す力みたいなものがある事になる。大筋は変わらねぇ、テメェの企みはそれに飲まれる程度だ」

 グッと、喉に掛かる圧力が増す。ほんの少しだけおっさんが手を動かし、喉が切れたのが熱い感覚で分かった。

「オレがもう少し手を動かすだけで死ぬガキだよお前は。そんな換えの効く端役だ。だから生きるために足掻くのは何もおかしくねぇ。身を守る術を得ろうと人を殺し、臆病に狛犬を拾うのもな」

 それは何故かわからなかった。
 おっさんの話を聞き、何の根拠もないある考えが浮かんだのだ。そしてそれは妙な確信があった。

 最初からどこか疑問があったのだ。何故こんなことをするのか。自分の身の安全ということならさっさと夜逃げでもすれば良かったはずであり、こんな真似をする必要はないのだ。何せ白が帰ってくる前に話が上手く終わったとしても、俺から白にその事は伝わるし、そうすればおっさんの身は危険に晒される。その程度のこと考えつかないはずがない。
 その疑問が今、消えた。
 おっさんはきっと、俺の事を思ってこの事態を起こした――なんて、そんな馬鹿な考えが浮かんでしまったのだ。
 
 きっとこれは俺の馬鹿な妄想の類なのかもしれない。本人に聞いたところで鼻で笑われて話してもらえないに違いない。
 距離を取ったとい
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