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弱者の足掻き
十三話 「依月」
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なとそう気づく。おっさんの行動は俺も似たことをしたことがあった。

「慣れならとっくにあるぞ。お前らは知らないだろうがな。死体だのなんだのは慣れっこだ」

 おっさんは手に持った千本を白へと投げ返し、白がそれを受け取る。
 興味深そうな俺の視線をおっさんは見返す。

「人生投げ出しそうなガキに説教替わりに教えてやるよ。疑問に思わなかったのか知らんが、オレのこの歳で今後隠居するだけの金が普通にやってて貯まるわけねぇだろ。金回りのいいことやったんだよ。戦争中で物品商売で金回り良いって言ったら特需が出る武器やら毒やらそっち方面だ」

 どうでもいい昔話をするようにおっさんは言う。
 基本は安全なとこから裏で品流し。自分の家からちょろまかしたり値段釣り上げて偶に敵側にも。既に戦火がやんでいた所に行って使える物を漁りもした。当然其のせいで死人も出た。
 戦争終わったほとぼりが付いてしていたことがバレる可能性もあった。だから稼いだ金持ってトンズラ決めようと思った。ちょうどいいことに知り合いは大概死んでいて動きやすい身の上だった。
 そんな事をおっさんはつまらなそうに言った。

 おっさんはその事を何とも思っていなかった。俺にはそれが不思議だった。
 それが分かったのか、おっさんは尚更つまらそうに言った。

「時代だよ時代。戦えればガキでも繰り出されて敵を殺せば褒められる。法なんざ時代の統治基準だ。今とは違うんだよ。例え目の前で誰か死んでも知らない奴なら次の日には顔も忘れる。殺して悩んで自分の死を受け入れる、何て脳味噌お花畑の馬鹿だよ」
「……仕方ないじゃないですか。今は『そういう時代』何ですから。昔とは違います」

 違いねぇ。そうおっさんは嗤う。

「それにそんな台詞、首に凶器突きつけてる相手が言う言葉じゃないと思いますよ。殺しかけてる相手に、遠まわしに気楽に生きろ何て」
「人質に命諦められたら困るだろうが」
「ああ、確かに」

 そりゃそうだと納得。向こうからしたら大問題だ。
 おっさんは白を牽制するように時たま俺の喉を撫でるように小刀を動かす。

「それにさっきの泣き言が気に食わん。流れを変えただのそれがいけなかっただの。上から目線で何様のつもりだクソだ」
「上からって……そんなつもりは」
「上からだろうが。流れってのはどうせ自分が知ってる未来、ってとこだろう。気味の悪い言い方すれば運命とか其の辺か? それを認めたらオレが生き残ってること自体否定される。殺すぞ」

 グッと喉元にかかった力に冗談にならないと内心思う。
 気に食わないといわれても俺には返す言葉がない。けれどそう思ってしまうのは仕方ないじゃないかと心の中で泣き言が漏れる。自分がいなければきっと「依月」は水の国に残っただろう。いや、そも
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