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弱者の足掻き
十三話 「依月」
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おーおー、猟犬見たいな眼しやがって。今にも唸り声あげそうじゃねぇか。ご覧の通りお前が動けば飼い主はお陀仏だ。上手く無力化しよう、何て思うなよ。オレに気づかせずに、反動や反射でオレの手を一切動かさずに出来るなら別だがよ。
……にしても本気かよ。一瞬さえ躊躇わずに急所を狙われるとは思わなかったぞ糞が」

 自らの首を庇う様に動かされたおっさんの腕に一本、そして胸元に一本、千本が刺さっていた。胸元のは服に阻まれ深く刺さっていないようだが庇っていなければもう一本は首を貫いていだろう。盾となった腕から流れたおっさんの血が下にある俺の顔に落ちる。

 振り抜かれていた白の腕は隠し持っていた千本を投げていたのだ。それを気付けなかったことより俺は白の判断に驚嘆していた。
 今日の朝まで何の変哲もなかった、ずっと同じ家にいて接していた相手を何の躊躇いもなく、息を吸うように当然の如く殺す判断をし行動に移せる。それは普通の倫理観なら有り得ない、狂っているとさえ言える道徳性だ。

 原作の、記憶にある白は確かに異常な献身性を持つ存在だった。けれど好意的な面識のある相手を殺す際は躊躇っていた。けれど今、目の前にいる白はそれさえない。
 献身捧げる相手に命の危険があったかどうかの条件の差はある。それは非常に大きな差だが、それでもここまでの違いを生み出せるのだろうか。記憶にあるままなら、相手を制する方向に動いたのではないか。
 これも、俺のせいで変わったのだろうか。俺が弱かったから、肩代わりさせた結果なのだろうか。
 そんな成れ果てた白から俺は視線が動かせない。

「イツキさんを離せ」

 ああ、俺そんな名前だったな。ふと、そんなバカみたいな感想が浮かんだ。

「離したら殺されるだろが。バカ抜かせ。まずはその殺気と、武器に伸ばした手を隠してから言えよ」
「……お前がイツキさんを殺せば僕はお前を殺す。爪を剥ぎ指に釘を打ち、肉を焼いて四肢を切り落とし少しずつ殺していく」
「冗談じゃなさそうなのが怖いなおい。安心しろ、何もなけりゃ殺さねぇよ。それにこいつの事を考えるなら、どうであれお前がオレを殺せずはずないからな」

 もし白がおっさんを殺したとして、それは色々な弊害がある。外に出て人に関わり仕事をしていた人間が一人消えるのだ、周りがいつまでも気づかないままでいるはずがない。死体も消えるわけではなく処理しなければならない。この場所では人目につく可能性が高い。
 疑いの目が向く前に逃げる必要もある。だが後でバレたとして、疑惑の目は当然俺たちに向く。おっさんと一緒に住んでいるのはある程度の人間には知られている。悪目立ちしたくない身として現状おっさんを殺すというのは余程のことがない限りデメリットしかない。

 余裕あるおっさんの様子を見るに、何らかの準
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