暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
55話「第二次本戦 (2)」
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
空けた地へ着地したロボは、へへっと笑いながら鼻の下を拭った。
 アシュレイは溜め息を零しつつ剣を握る右手をぶらぶらと振った。真上に跳んだロボが間合いの外まで後退したのは、彼の剣先をナックル部分で押し返したからだ。

(“押し返す”なんて、生易しいものじゃないな)

 勢いよく突き出した剣にタイミングを合わせて拳を出された。剣が割れるかと思ったのは、嘘ではない。
 ぽんぽんと剣の腹を手のひらで叩き、状態を確認。ロボも肩をバキバキ鳴らし、気合いを入れ直した。

「ったく、このあとまだまだ試合があるのに…」
「悪ぃな! 安心しろ、俺がお前の代わりに優勝してやるからよ!」
「それはそれは――」

 キラリとアシュレイの黒の眸が光った。

「――大層な自信だことで!」
「ッ!?」

 赤い血が空に舞う。
 ロボの細い目が見開かれた。 アシュレイが一瞬で近づきロボの両腕に浅くない傷をつけたのだ。

(危ねぇ…)

 獣人の第六感で咄嗟に腕を犠牲にしたが、もし間に合わなかったら、

(俺の首が飛んでいた)

 ロボの前に立ち挑発的な笑みを浮かべているアシュレイを見やる。一見隙だらけのように見えるが、見る者が見れば、そんな隙など欠片も無いことが分かる。試合開始直後もそうだった。どこから攻めれば落とせるのか皆目見当もつかない。しばらく動きがなかったのはその為だ。
 ダラダラと滴る血を長い舌で舐めると、ロボはニヤリと笑った。くじを引いたあと、アシュレイに向けたあの好戦的な、野性的な笑みだ。

「……楽しめそうだぜ」

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ