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戦場のヴァルキュリア 第二次ガリア戦役黙秘録
第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
ヴェアヴォルフ
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ルフ』の隊員は徽章の階級より二段階高い階級の扱いになるが、これはいかがなものかと感じたのだ。
 それを見抜いたマルギットは、悔しそうに訳を話す。

「メッペル市の対岸に渡るファウゼンとランドグリーズをつなぐ鉄道があるはご存じでしょう? この目とはなのさきにある鉄橋が帝国軍によって占拠され、今や北部は孤立無援です。そこで数日前に正規軍と『ヴェアヴォルフ』の共同作戦で敵基地の攻略に多いで挑みました……」

 そこまで言うと、彼女の顔に変化が訪れた。悲しみが急激に怒りへと変化したのだ。

「作戦中に司令官は功を焦り突出して捕縛され、残された代理は我が身可愛さで我々を盾にして逃げたんです。そのせいでヴィマール隊長は兵を退却させる際に狙撃されました。皆、本当はもっと真面目なんですが隊長の死に苛立っていて……ネレイは特に露骨でしてね。こうでもしないと誰かが代理を敵前逃亡で射殺しかねないんです」

「それは怒るのも仕方ない……。戦友の死は、辛い」

 アンリも正規軍の小隊長として部下を持ち、時には失うこともあった。その度に彼女は悲しみ己の作戦や指揮に欠点がなかったかと省みたこともある。そして、戦場に遊軍を放って逃げる真似もしなかったし、味方を盾にしようともしなかった。
 王立ランシール士官学校はかつては数多くの名将を輩出したものの、今や性根の腐った貴族の子息や令嬢が肩書きを得るための場所でしかない。なんせ未だにダルクス人差別を当然と考える生徒が大半で、学業そっちのけでクラス内で権力闘争に明け暮れているのだ。腰抜けが増えて当然の結果だ。初めて任された部隊ではランシール出身という理由だけで義遊軍上がりの古参兵から反発されたくらいだから、貴族階級への不信感は相当のものだ。

「……湿っぽい話はやめましょう。精神衛生上、良くないですから」

「ではこの部隊の武装について話してくれ」

「喜んで。まず戦車ですが……」


・ ・ ・ ・ 



 メッペル基地司令官クメール・アルザス中尉と、双子の戦車兵ノーデス兄妹、ガイウスを加えて敵鉄道拠点制圧作戦の会議が開かれた。『ヴェアヴォルフ』の小さなキャンプに隊員が集結し、粗末な折り畳み式のテーブルに近隣の地図を広げている。不良貴族を絵に描いたような不遜な態度のクメールは一人椅子に座りふんぞり返る。

「貴様が新しい隊長か。私を呼び出すなら、それなりの策があるよだろうな? ええ?」

「はい。まず日の出と共に鹵獲した帝国の野戦砲で鉄橋の入り口に居座る敵戦車を撃破します。その後、野戦砲は破棄し同時攻撃で狙撃隊が櫓のスナイパーを殲滅、後は総攻撃をかけます。夜中の内にすぐそこの高台へ野戦砲を移し、狙撃隊を配置するだけで準備は……」

「ふん。好きにしろ……貴様らはクロウ少将の直属
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