DICTIONARY
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さんのお店ではこれまで色んなものを買取ってもらった。そのどれもが見た目が高価な品ばかりだった。しかし、本を売ったのは今回が初めてだった。ここでお金にならないと言われたら、疲れた体でもう一度隣村まで戻らなければいけない。
それだけは、避けたかった。
もう一度あの村に戻っていく体力がない。お腹も空いたこの状況で行こうものなら途中で倒れてしまうだろう。
「まだ…?」
イライラしながら少年は言う。腹が空いたと主張するように。
お爺さんは首をかしげながら少年に一つ質問をしてきた。
「悪いが、これは字が読めん。どういった辞典なのかわからないし、そもそもこれを他のお客さんに買取ってもらえるか分からないのだが、…君にこれが読めるのかな?」
そういったお爺さんが少年に本を見せた。
そこには一文が記載されており、絵と小さい文字列が大量に並んでいた。絵には手のマークと火のように見える線が記されていた。
「これが何かわしには分からんのだが、絵を見る限りじゃ火に見える。だが、それだけでは良く分からない、何よりもこの一文が何とかいてあるのか分からないのだよ」
そういってお爺さんは一文を指差した。
『Ignis』
と書かれていた。
少年は読めた。お爺さんにも読めるはずなのだが読めないといってくる、ふざけているのだろうか?
「お爺さん、これは僕でも読める。馬鹿にしてるの?買えないなら買えないと……言ってくれよ」
空腹と疲労のせいか口調が厳しくなったが、買えないと言われたら困る為最後はやや小さく小声で言った。
「ふぅ〜…どうしようかね…」
そういってお爺さんは少し考え…、結論をだした。
「まぁ、今回も見た目が綺麗じゃし『辞典』なら物好きな奴が買うじゃろう…」
そういって少年に少しばかりのお金を渡した。
お金をもらった少年は急いでお店を出た。売った本を元手に食べ物を買いにさらに大きな町に走っていった。
15年後、その少年はたくましく育ち町一番の義賊の長となった。
おわり
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