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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第十六話 折り鶴
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は何だが、和音は自分の折り紙の腕にそこそこの自信を持っている。
 ――例えば、左手だけで鶴が折れてしまう程度には。

「まあ見ていてください。――いきますよ」
「…………?」

 小さく深呼吸して集中を高めると、和音は左手だけを机に置いて紙を折り始めた。
 まず対角同時を折り合わせ、さらにその状態からもう一度対角を折り合わせる。そこから角を膨らませて正方形にして、開いてある方を下にして折っていく。

「おお……!!」
「鮮やかなものだな……」
「やっぱり扶桑人って器用なのね」

 いつの間にか、みんな自分の手をとめて和音の特技に見入っていた。片手だけで鶴を折る和音は、しかしその手つきに迷いはなく、鼻歌を歌いながら口元にうっすらと笑みを浮かべているほどである。

「まだまだここからです」

 寸分のズレもなく、完璧に折っていく。基本形を完成させると、そこから器用に翼になる部分を膨らませて折り返す。頭の部分を折り曲げて、指を巧く使って両の翼を広げてやると――

「――これで完成です!」
「「「おおー!!」」」

 綺麗に出来上がった鶴を見て思わず歓声が上がる。その出来栄えは、片手だけで折ったといわれても信じられないレベルだ。

「さすがですわね……見直しましたわ」
「くっ! 沖田に出来てなぜわたしには……!!」

 目に涙をためて崩れ落ちるバルクホルン。どうやら根本的に向いていないらしい。

「ずいぶんと器用なものだな。片手で鶴を折れる奴なんて聞いたことがないぞ」
「いやぁ、訓練でしょっちゅう怪我をしては医務室に担ぎ込まれて……暇つぶしに折っていたら、いつの間にかできるようになったんですよ」

 照れ笑いしながら言う和音。しかし、持ち前の器用さは中々のものである。

「あら、もうこんな時間だわ」

 ふとミーナが壁の時計に目を向けると、時計の針はすっかり動いて、あと少しで夕食というところまで来ていた。窓の外を見ると、穏やかなロマーニャの海が茜色に染まっている。どうやら随分と熱中していたらしい。

「じゃあ、折り紙片付けますね。余った分はこっちに戻しておいてください」

 出来上がった作品は食堂の出窓へ飾り、余った紙は和音が回収していく。
 夕食時も、話題は専ら折り紙についてだった。窓に飾ったそれぞれに作品を鑑賞しつつ、リーネたちの料理に舌鼓を打つ。
 非番の夜は、こうして平穏のうちに過ぎて行った――






「あと12羽か。今日はここまでにしてもう寝ようっと……」

 夕食後の夜。和音は自室に引き上げた後、机の上で無心に折り鶴を折っていた。
 部屋の床には折あげられた無数の鶴が散らばっている。その数はおそらく数百は下らないだろう。赤、黄、青、様々な色で折ら
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