Episode2 社会的な抹殺
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情を明確に俺に向け直したキバオウが叫ぶ、いや怒鳴った。
「お前!《レッド》やないかい!」
モンスターの咆哮にも似たその言葉に俺は目を見開いた。《レッド》という言葉は聞き慣れないが、何故か背筋が寒くなった。
「《レッド》ってなんだ…?」
異様に震えた声が口からこぼれた。その言葉にはさっきまで静観の姿勢を崩さなかったキリトが答えた。
「プレイヤーのヒットポイントを全損させたプレイヤー…殺人を犯したプレイヤーのことを普通のオレンジと区別してそう呼ぶんだ」
「…は?」
《レッド》。それが自分のことを指しているという認識はいつまで待っても出来なかった。なぜならキリトの説明と俺の現状は全く重ならない。俺はプレイヤーを全損どころか不可抗力で傷付けただけなのだから。
それでも俯けた視線が何故か上げられなかった。視界には見上げるアカリの顔があるのだが思考を懸命に巡らしているせいか、ボンヤリとしている。
何故、俺はキバオウに《レッド》呼ばわりされているのか。ただのでっちあげ?なら、さっきの手配書は?イタズラにしては悪質過ぎる。
――ここで死ぬか、それとも社会的に抹殺されるか
「あっ!あぁ…」
こんな時間差で来る遅効性の毒のように。奴が言っていたのはこういうことだったのか。
ザリッ、と剣の抜ける音に目を向けつつ口を開くが動揺しているのか言葉は出ない。「違う!」ともう一度叫べばいいのに。
考えの読めないキリトの表情が、敵意を剥き出したキバオウの顔が、不安そうなアカリの顔が――。
「聞かせてもろたで。その話、ウチも入れてや」
俺が隠れられないと言った木の影から現れた一人の女性プレイヤーによって俺に向けられなくなった。真っ先に食いついたのはキバオウだ。
「今度は誰やねん!」
「ウチ?ウチはシスイや。エセ関西弁のキバオウさん」
「誰がエセやねん!」
シスイだ。襟の付いた白のシャツに黒のコートと黒のパンツとまるでスーツのような恰好のシスイはキバオウの答えに笑った。
「冗談やってば!」
笑い飛ばされたキバオウが表情を二転三転させているうちにシスイが俺に並び、肩に手を置いた。
「で、あんたらにはこいつがそんな悪いこと出来るように見えてんの?」
「見えとるも何もこうやって指名手配されとるんやないか!…って、あ…」
キバオウが突き出した手はまず間違いなく手配書を見せたかったのだろうが、それは彼自身が握り潰してしまっている。それにぷふっ、と吹き出したシスイがコートの内ポケットから先程の紙を取り出した。
「これのことやろ?ご丁寧に道具屋やったり武器屋やったりにフリーペーパーで置いてあったから一枚貰ってきたわ」
ヒラヒラとその紙をさせた後一瞬だけ目を通
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