Episode2 社会的な抹殺
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と後ずさってきたアカリの背中を支えながらキバオウを見返した。少々、いやかなり睨んでやりたいような気分だったが表情には出ないように極力努力する。
「本当に何もやってないんだ。説明するといろいろややこしいんだけどさ。とにかく、俺は犯罪者じゃない」
「…そうは言うけどやな、何もしてへんなんて証拠あるんかい」
「証拠って…」
俺の平静を装った表情が効いたのか、もしくは今にも泣き出しそうに歪んだアカリの顔に罪悪感を感じたのかキバオウの口調が緩んだ。しかし、キバオウに俺から返す言葉がない。
俺がオレンジである証拠なら頭の上に浮かんでいるのがまさにそうなのだが。そうじゃない証拠となると何も思い付かない。
「あ、あたしがっ!あたしがカイトさんは悪くないって知ってますっ!」
若干言葉足らずな気がするが懸命なアカリの訴えかけにようやくキバオウが沈黙した。むすっとした表情のキバオウが剣をゆっくりと鞘に納め始めた。それを見た俺はこっそり詰めていた息を吐き出した。
キリトを説得したのもそうだが、アカリの言葉は初対面の他人にも裏表がないことが伝わる。真っすぐ、それでいてじんわり染み込む。すでに俺は二度救われている。
剣を納め終えたキバオウに慎重に問い掛けた。
「分かって、くれたのか?」
するとキバオウはふんっ、と言いながら顔を背けた。完全に剣を納め終えた腕を胸の前で組み後ろのメンバーに先に行けと指示を出す。
「別に自分を信じたわけとちゃう。ただ自分みたいな小物はワイがわざわざ手出さんでもいいっちゅうだけの話や!」
再びふんっ、と言ったキバオウが背を向ける前にこちらを直視した。
「…自分名前はなんちゅうねん」
「俺か?カイトだ」
「…あ?どっかで聞いたような名前やの…」
キバオウはそう言うがそんなわけあるはずもない。確かに一応俺も攻略組の端くれではあるが、キリトがそうであったように攻略組のメインの面々が覚えているはずもない。そんなわけで不思議に思いつつ微妙な角度で首を傾げていると、先に行ったはずの解放隊のメンバーからあっ、という声が上がった。似たり寄ったりな鎧の中から手に巻いた紙を握った一人が抜け出した。
「キバオウさん!」と叫び駆け寄ったそいつから手渡された紙を見たキバオウの顔が驚愕の色を呈した。
「自分、ホンマに《カイト》っちゅうんやな…」
その紙がこちらに向けて広げられた。それには赤い文字でデカデカと《WANTED》と見出しが書かれており、下に細々とした本文が続く。少し遠目にその文章を追った俺の目が最初の一文も読み切らないうちにキバオウの手によりその手配書が握り潰された。耐久値を失い小さなポリゴン片と散った紙の向こうで歯を噛み締めたキバオウの顔がちらついた。
その表
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