第十二話 かつての日常
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
シンは部屋でベッドに仰向けになりながら昔のこと―――オーブにいた頃のことを思い出す。
オーブでクラウと始めて会ったのは確か戦争が始まる一年ほど前のことだった。
◇
「お兄ちゃん、早く!置いてっちゃうよ!」
「待てよ、マユ!」
家族で買い物に出かけてて、マユは欲しがってた携帯電話を買ってもらえることに凄い喜んでたんだ。だから、一人先走っててそれを兄として諌めるために追いかけてた時にマユが後ろを向いてたせいでぶつかった人。
それが、クラウ・ハーケン―――プラントに行く際に俺に色々と援助してくれた兄のような人との出会いだった。
「すいません、妹が!」
「だって、お兄ちゃんが遅かったせいだし」
「こら、マユ。謝れって」
和気藹々とした様子で話し合う兄妹を微笑ましく見るようにその青年は言った。
「いや、ぶつかったって言っても怪我もないし大丈夫だよ。君の方こそ怪我はなかったかい」
知り合ったきっかけはこの時。互いに家が近いと言うこともあり、彼は良く家に来るようになった。俺には本やゲームを、マユにはぬいぐるみや飾りといったものをよく持って来ていた。
モルゲンレーテで働いてるらしく、彼はその中でも開発関係の部門で働いてたらしい。らしいと言うのは実際に俺がそれを知ったのはプラントに移住してからのことだからだ。
「おにーちゃん!」
「うわッ!?」
紅葉の景色が綺麗に映っている森林公園で本を読んでた時にマユは後ろから突撃してきたことがあった。怒って追いかけたらいつの間にかただの追いかけっこになってた気がする。
「あ、クラウ兄さん!」
マユはそう言いながらこちらに来ていたクラウにそのまま突撃する。微笑ながら彼は受け止めて頭をなでたりもしていた。マユはクラウに懐いてクラウ兄さんとまで呼ばれてた。
ちょっと嫉妬したりもしたけど、それがマユに対してなのか、クラウに対してなのかは微妙な所だ。正直な所どっちにも嫉妬してたかもしれない。とはいえ、どちらにしても俺もマユと同じくらいにはクラウを尊敬してた。
一回り離れた年の兄が居たらこんな感じなんだろうかっていつも思ってたと思う。
戦争が始まってからクラウが来る機会は減った。その時はまだ戦争の実感はなかったけど、クラウが来ないのは戦争が原因だって言うのは理解してた。
それでも暇を見つけては会いに来てくれたりもして父さんや母さんと良く話したりもしてた。今にして思うときっと戦争に対して何か話してたんだと思う。
ヘリオポリスが崩壊したって話を聞いた時は驚いた。クラウはそれが原因なのかもっと忙しくなったみたいだった。
アラスカの本部やパナマがやられてしまうと、戦争は一気に僕達の側にやってきた。旗色の悪くなった地球軍がバカ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ