第三十六話 少年期R
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
金魚なんだが」
それからも何度か挑んだが、結局やつを捕らえることはできなかった。後ろで応援してくれたアリシアとメェーちゃんには申し訳なかった。さすがにこれ以上するのは俺のお小遣いがピンチになる。だが、俺は再戦を誓った。来年こそは俺が勝ってみせるぞ!
******
「わぁ、これが花火なんだー」
「アリシアは花火を見るの初めてだったな。綺麗だろ?」
「うん!」
嬉しそうな妹の表情に俺も笑みが浮かぶ。空に打ち上げられる色とりどりの花火を友人たちと見物している。縁日から少し外れたところで、金魚屋のおやじさんから穴場を教えてもらったのだ。遮蔽物も人も少ないのですごくよく見える。
俺自身もアリシアと同じように、この世界で初めて眺める花火に気分が高揚した。周りを見渡すと、友人たちも思い思いに花火を楽しんでいるらしい。笑いながらおしゃべりしたり、屋台で買った食べ物をおいしそうに食べている。しかし少女Dよ、その大盛りの焼きそばは女の子としていいのか。エイカと少年Eが羨ましそうに見ていたけど、真似したらダメだぞ。
「もう夏も終わりか…。そろそろ生活のリズムを整えておかないとな」
「えへへ、つい夜更かししちゃったり、お寝坊さんになっちゃっていたもんね」
「そうだなー」
今までの休みの様子を振り返ると、確かに結構だれてしまっている。これは気を付けないと、寝坊しそうだ。早起きを一緒に頑張ろうと妹と約束を交わした。
「あっ、次の花火は15分間のメッセージ花火ショーなんだって」
「お、もうそんな時間か」
アレックスが祭りのプログラムを見ながら呟いた言葉に、俺は携帯用端末の電源を入れる。メールでそろそろ時間だと知らせると、すぐに返信メールが返ってきた。ターゲットを花火が見える場所に誘導してくれたらしい。よしよし。
「何やっているんだ、お前?」
「ん、あぁちょっとしたサプライズイベントだよ。実は今回のメッセージ花火なんだけど、ある人への俺と協力者なりのささやかなプレゼントなんだー」
「は?」
不思議そうに首を傾げるエイカに、もう少しでわかるよと声をかけておく。いやぁ、相手にばれないようにあの日から密かに計画をたててきたが、ようやく報われるな。痕跡を辿られないように転移で移動したし、お金や書類などの手回しにも気を使った。別に悪いことはしていないんだし、問題はないよねー。
「あ、始まった!」
「本当だ。綺麗に花火の中心に文字が浮き上がってくるんだな」
「へぇー、どれどれ」
これから始まるのは小さなエピソードも交えた、たった1人のためのメッセージ。このクラナガン中の人々がそれを見つめている。そこに綴られるお祝いの言葉は彼に届くだろうか。届いたらどんな反応をしてくれるだろ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ