第三十六話 少年期R
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後や夏休みに遊んでいた少女D。彼女は普段通りやや巻き毛な青く長い髪をリボンで結び、ポニーテールにしている。背が高く、落ち着いた感じの服も合わさってちょっとお姉さんっぽいな。
「お、本当だ。少女D大量じゃん」
「あ、お兄ちゃん」
「こんばんは、アル。時間があったから先に遊ばせてもらっているわよ」
俺が声をかけると嬉しそうに笑顔を向けてくれるアリシア。俺も笑みを浮かべながら、彼女たちがやっているゲームを眺める。それは限定された場所で逃げ惑う獲物を追いつめ、捕獲するゲームであった。少女Dはまたしても武器を手に滑らせ、鮮やかに次々と獲物を捕らえていく。実に容赦がない。
「これぞまさにリアル鬼ごっこ」
「ただの金魚すくいなんだけど…」
少女Dよ、細かいことは気にするな。
「よーし、俺も捕まえたる。すいませーん、ポイ一つください」
そう言って看板に書かれている通りの金額を出して、金魚屋のおやじさんに渡す。すると少し逡巡した後、おやじさんはポイを渡してくれた。ちょっと疑問に思ったが、まぁいいか。
そこそこ広い水槽の前に立ち、アリシアたちの隣に座る。入れ物を左手に持ち、ポイを片手にいざ出陣。夏の特番で見た名人さんの技術を頭の中で反芻させる。目指す目標は10匹以上! それでは、尋常にしょう――「ビリッ」――ビリッ?
「あ、やぶれた」
「いやいや、まだ水にすらつけていないよ!?」
アリシアの言うとおり、俺の持つポイには真ん中にでかでかと穴が開いていた。学校でできなかった怪奇体験がまさかの金魚すくいで実現した。えっ、実は金魚すくいって心霊スポットだったの? これがミッドチルダの怪談だったのかよ!
「じゃない! ちょっとおやじさんどういうことですか! 新手のポイポイ詐欺ですか!?」
「悪いな、坊や。ここはある意味いわくつきなんだ」
俺のクレームにふっ、と小さく笑みをこぼしたおじさん。なんだこの凄みは。ここには一体何があるっていうんだ。俺は静かに視線を彷徨わせ、辺りを観察するがどこにでもある普通の屋台だ。アリシアたちは今も金魚すくいを楽しんでいるし、少女Dの入れ物の中には金魚が積み重なっている。新しい入れ物に変えてあげた方がいいと思う。
俺は自分が持っていた入れ物を、少女Dに渡しながら考える。一体どういうことだろう。俺と彼女たちと何が違う。なぜ俺の身にこんなことが起こった。わからないなら聞くしかない。俺は金魚屋のおじさんと目を合わせた。
「いわくって一体」
「ここはな……女の子しか遊べないんだ」
「すいません、ワンモア」
「男はどっかいけ」
ドストレートに返してきやがったよ、この人。
「いやいやいや、なにその理論。女の子だけってそこは混浴にしようよ!」
「おじち
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