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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十話 邂逅
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れを許すかな。同盟が戦力を整えるのを黙って待つか……。ちょっと考えられんな。あの男はそれを許すほど甘くは無い。そして帝国の内部では権力争いなどによる足の引っ張り合いは無い……、となるとフェザーン返還は早い時点で起きるだろうな。

コーヒーも飲み終わった、そろそろ帰るか……。席を立ち料金を払おうとカウンターに向かう。
「話せるか」
聞き覚えのある声が背後から聞こえた。大きな声ではない、何処か周囲を憚る声だが雷鳴のように響いた。振り返りそうになるのを必死に押し留める。
「十五分後、五百七号室」

背後から一人の男が私を追い抜いて行く。見覚えのある後ろ姿だ、やはりあの男か……。となると先程の視線は彼か……。壁にかかっている時計を見た、午後三時二十三分。予定変更だ、あと五分で五百七号室へ行かなくては……。

支払いを済ませエレベータに向かう。落ち着け、時間は有る、ゆっくりとさりげなく歩くんだ。周囲の不審を買うような行動はとるんじゃない。彼が一人とは限らない、気を付けるんだ、そして何故接触してきたのか……。仲間になれという事か、それとも裏切り者として糾弾に来たか、細心の注意が必要だ……。

部屋に着いたのは三時二十七分だった。部屋の中を確認する、特におかしなところは無い、商談に使った時のままだ。接触してきたのは偶然か……、あらかじめこちらをマークしていたわけではないらしい、いや油断するな、未だ分からない……。

ホルスターからブラスターを取り出しエネルギーパックを確認する。問題ない、射撃モードを捕獲用に切り替えてブラスターをホルスターに戻した。三時三十二分、残り六分、椅子を移動させる。終わった時、残り時間は三分になっていた。深呼吸をすると今動かした椅子に座り来訪者を待った。

トントンという音が聞こえたのは三時三十七分だった。ブラスターを右手に構え足音を殺してドアに近づく。ドアスコープからは男が一人だけ見えた。俯いていて顔は良く見えない、罠か? ロックを静かに解除すると急いでドアから離れ部屋に戻った。来訪者から死角になる場所に身を置き息を潜めて待ち受ける。

ドアの開く音が聞こえた。ゆっくりと歩いて来る気配がする。どうやら向こうも警戒しているらしい。相手が見えた、やはりこいつか……。彼が私を見た。困惑が顔に浮かんでいる。
「生きていたのだな、フレーゲル男爵……」
「……久しぶりだな、ラートブルフ男爵」

ラートブルフ男爵が私のブラスターを見た、そして私を見る。
「念のためだ、悪く思うな」
「……誤解しないでくれ、ただ懐かしく思っただけだ」
「それでもだ、そっちの椅子に座ってくれ」

ラートブルフ男爵が渋々といった表情で椅子に座る、ドアに近い方の椅子だ、彼からは背後になるからドアは見えない。そして私は彼の正面に座った、
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