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GGO編ーファントム・バレット編ー
56.死への恐怖
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れば、フードの下の顔がはっきり見えてしまう。そう思うと指が動かせず、そのまま右手をグリップに移動させ、狙撃体勢に入った。

死銃は、こちらの行動に気づいているはずなのに回避もスピードも落とさない。舐められている。だが、いつあのハンドガンを握り、こちらに向けるかの恐怖が湧いてくる。

(一発、一発だけ撃つんだ)

シノンはトリガーガードの中の人差し指を動かして引き金に触れさせようとした。

だが。

どんなに力を込めても、指先のトリガーにたどり着かない。まるで、無二のパートナーであるヘカート自身が拒むように.......

いや、違う。拒んでいるのは自分だ。シノンの中の詩乃が、銃を撃つことを拒否しているだ。

「.......撃てない」

シノン/詩乃は、掠れた声で囁いた。

「撃てないの。指が動かない。私.....もう、戦えない」

「「いや、撃てる!!」」

即座に、二人の強く厳しい声が背中を打ち据えた。

「戦えない人間なんかいない!戦うか、戦わないか、その選択しがあるだけだ!」

「俺たちがシノンを支える!だから戦えシノン!!」

二人のライバルにそこまで言われ、しかしそれでも、心はわずかしか動かない。

(選択。なら、私は戦わないほうを選ぶ。だって、もう辛い思いはしたくない。俺たちが支えるって言っても、あの男への恨みと恐怖が消えるわけでもなく、私はその恐怖を抱えていきるしかないんだから)

下を向いて、息を殺して、何も見ず、何も感じず........

突然、凍り付いた右手を温かな何かが包み込む。

閉じかけていた瞼を見開いた。
シュウがリアステップに立つ私の背中に覆いかぶさり、右手をいっぱいに伸ばし、ヘカートのグリップから剥がれる寸前だった右手を包み込んで、ヘカートのグリップを握りしめ、私の耳元で叫んだ。

「俺も撃つ!だから、俺を信じて、この指を動かしてくれ!」

一丁の銃を二人で撃つことなどシステム的に可能なのか。それでも、シュウの掌が触れる部分から感じる温かさが凍った指をわずかに溶かしていくのを感じた。

ぴく、と人差し指が震え.......関節が軋み......指先が、トリガーの金属を捉えた。

視界にグリーンの着弾予測円が表示されるが、それは死銃の体から大きく外れる。それもそのはずだ。心拍が乱れ、そのうえ走行中のバギーが激しく振動しているせいだ。

「だ、だめ......こんなに揺れてたら、照準が......」

すると私に覆いかぶさるシュウの左手がヘカートをしっかりと支える。

「大丈夫だ。あのバカを信じろ」

その声は、なぜか私を少し落ち着かせ心拍の乱れがほんの少しだが和らぐ。
すると、背中の方からもう一人の少年の声が耳に届く。
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