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立派な魔法使い 偉大な悪魔
七章 『氷の学び舎』
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下を始めた。その爪は地面に突き立てる様に、真っ直ぐに構えられている。

(そういう事かい!)

 先程の、地面を這うような氷柱の攻撃を見た小太郎
は、これから起こる事をある程度予測できた。
 落下してきたフロストの爪が地面に突き刺さる。爪を介して地に伝わった冷気と、フロスト自身が開放した冷気。今までとは比較にならないほどに空間が凍てつき、周囲に鋭利で巨大な氷柱を形成する。それも一本や二本ではない。剣山の如く、いくつもそびえ立った。これをまともに食らえば、全身を氷柱に貫かれることになるだろう。
 しかし小太郎は攻撃をある程度予測できたためか、紙一重の所で氷柱の範囲外へ逃れていた。もっとも、完全に避け切ることはできなかったようで、軽く肩口をかすったようだ。

「らあぁ!」

 それを気にするでもなく、小太郎は即座に地を蹴った。フロストを囲むようにあった氷柱は既に崩壊しているため、障害物はない。
 高速で接近する小太郎に対して、フロストは爪を突き立てる。突進して来る相手に、刺突で迎え撃つつもりのようだ。向かってくる者の速度が速ければ速いほど相手は躱しづらい上に、刺突の破壊力は増す。合理的な選択だろう。小太郎もそれは熟知している。
 突き出されたフロストの爪先に、小太郎は自身の爪を突き合わせる。すると、フロストの氷でできた爪は音を立てて粉砕した。
 狙いどおりや、と小太郎は僅かに口角を上げた。
 小太郎はこれを狙っていた。このフロストは、小太郎が突き上げた拳を腕を出して受けていた。その際、フロストの爪は僅かに脆くなっていたのである。その状態で衝突点に大きな負荷がかかる刺突を繰り出せば、そうなってもおかしくはない。小太郎が行ったように爪先と爪先を衝突させ、より大きな負荷をかければ尚更だ。

「もらった!」

 勢いを殺さずに、小太郎は獣化した爪をフロストへ突き立てる。フロストにはもう片方の氷の爪が残っているものの、もはやそれではどうにもならなかった。
 フロストの頚部に小太郎の爪が突き刺さり、トドメとばかりに、小太郎は更に押し込む。フロストの頭部は胴体から離れ、宙を舞った。

「ま、こんなもんや」

 力なく崩れ落ち、氷が砕けるように消えていくフロストを尻目に小太郎はエヴァンジェリンへ向き直った。
 フン、と鼻で笑ったエヴァンジェリンは、飛んできたフロストの頭部を腕を一振りして掻き消す。

「まったく、見てられんかったな」

 エヴァンジェリンが言うには、一撃目の突き上げで仕留められなかった時点で論外とのことだ。小太郎も、一撃目で仕留めていたら負傷する事もなかったと分かっているため、反論は出来ないようだ。

「ぐっ、ホンマにその通りやからムカツクわ……」
「まぁこの場は凌げたんだからいいじゃねぇか」


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