七章 『氷の学び舎』
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間にすぎない夕映には危険すぎた。そのため、彼女がが盾となったのだ。
「ご、ごめんなさいです! 私のせいで……」
全身をバエルの体液に塗れたエヴァンジェリンは、静かに手を出して夕映を制した。冷静を装おうとしているようだが、エヴァンジェリンの声は静かな怒気に震えていた。
「フ、フフフフ……気にするな綾崎夕映」
顔に付着したバエルの体液を拭って、エヴァンジェリンは続けた。
「おい、アルビレオ・イマ。思いの外遅かったことは見逃してやる。さっさとガキ共を連れて行け。私は、コイツを始末する」
一同が振り返ると、そこにはアルが立っていた。顔にはいつもの胡散臭い笑顔が張り付いている。
今のエヴァンジェリンに対して、軽口や弄るような言動を投げかける者など、まさに愚か者と言う他ない。普通なら、エヴァンジェリンの姿を見て震え上がるところだ。
「ふふふ、とても扇情的な姿をしていますね、キティ」
ところがその普通は、アルには当てはまらなかったようだ。もちろんアルはわざと言ったわけだが。
エヴァンジェリンは微動だにせずに、淡々と口を動かして伝えた。
「二度は言わん。失せろ」
指先はおろか、全身から冷気が溢れ出し始めたエヴァンジェリンを見て、アルは最低限の事を伝達する。
「分かりました。それでは終わりましたら世界樹の地下に来てください。ここからなら麻帆良教会の地下から行くのが良いかと思います」
それだけ言うと、アルは他の者達にも世界樹の地下へ行く事を伝えた。そしてエヴァンジェリン以外の者達は麻帆良教会の方へ向かっていった。
「ガハハ! んなチンチクリンに何ができる!」
バエルは醜い声を高らかに上げ、エヴァンジェリンを憐れむように見下ろしていた。当のエヴァンジェリンはさして気にしている様子はない。ただ冷徹な瞳が、バエルを捉えている。そして、努めて冷静に言い放った。
「何ができるだって? 貴様の駆除だよ」
その瞬間、エヴァンジェリンの姿が霞んだ。
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