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季節の変わり目
静かな夜

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電気を消すと、周りが闇で見えなくなった。それでもしばらく目を凝らしていると、月の光の助けもあって大分辺りが見えるようになってきた。寝返りを打って佐為のほうへと身体を向ける。佐為は仰向けの状態で布団から手を出して、その手を組んでいた。眠っているのかどうかは分からないが、胸の辺りが上下にゆっくり揺れるのを見て、寝てるのかな、と感じた。窓は開けていないが、静かな空間に木々の揺れ動く音がはっきりと聞こえる。隣の部屋の客はもう寝たんだろうか、空室なのか、物音ひとつしない。時刻はもう12時を過ぎていた。眠れなくてどうしようもない。その時、佐為の声が部屋に響いた。いきなりのことだったから、俺はびくっと震えて佐為の顔を確認する。目は閉じられていた。

「ヒカル、寝ましたか?」

「・・・寝てない」

「今日はいろんな所に行けて、本当に楽しかった。明日も、楽しみ」

「明日時間があったら、決めてたとこ以外にも連れてってやるからな」

「ありがとう、ヒカル」

「・・・なあ、佐為。何か、懐かしいような気がしないか?」

「懐かしい、気?」

「うん。ほら、前にも来たことがあるような、そんな感じ」

「そうですね。でも神社やお寺はいっぱいありますから、きっと記憶が混じっているんでしょうね」

「・・・・・・そうかもな」

「でしょう?」

「うん。明日も早いから、もう寝よう」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ」

朝起きてから支度をして、ホテルのレストランで食事をとった。それから部屋に戻り荷物を持ってチェックアウトする。昨日行けなかった宝泉寺を訪れ、糸崎八幡宮など、秀策のゆかりの地を辿っていった。そうしていると、東京に帰ったのは夜の11時になってしまった。

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