ナイアーラトテップとの戦い U
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「が・・・フ・・・っ!」
護堂は、口から夥しい量の血を吐いた。原因は、彼の左胸に突き刺さっている、異形の神の腕だ。
(・・・見え・・・なかった・・・。何も・・・・・・)
これが、神と人の差なのだと言われればそれまでなのだが、それにしても突然難易度が跳ね上がりすぎだと思う・・・と、薄れゆく意識の中で護堂は文句を言った。何も見えなかったのだ。十数メートルは離れていた筈の距離が一瞬にしてゼロになったというのに、地を蹴る音どころか、風の動きさえ感じ取れなかった。目を離したわけでもないのに、気がついたら目の前にいて、胸を串刺しにされていたのだ。文句も言いたくなる。
異形の神の腕が引き抜かれ、彼の体が地面に倒れる・・・その瞬間
「けど・・・まだやれるっての・・・!」
グシャッ・・・!護堂は、コールタール状に溶けたコンクリートを力強く踏み込んだ。既に、胸の傷は塞がっている。
ちなみに、何故彼の足が地面に埋まらないかと言えば、事前にエリカに頼んで、『跳躍』の魔術の簡易版を掛けてもらっていたからである。この魔術のお蔭で、ある程度は足が埋まるが、身動きが取れなくなるほどではない。何故『跳躍』の魔術にしなかったのかというと、アレは慣れるのに時間がかかり過ぎて間に合わなかったのである。力の入れ具合で、ヘタをすればビルより高く飛んでしまうような魔術など、素人に使いこなせるものではない。
「お、おおおおおおおおおおおおおおお!!!」
護堂は、目の前の神に手を伸ばした。全身のバネを使い、抱きつくような格好で飛びかかる。彼我の距離はたったの一メートル弱。このタイミングならば、敵もどうすることも出来ない筈だった。
しかし・・・
フッ・・・と、まるで最初からそこには何も無かったかのように、その神は消えた。闇に溶けるようにして、その場から居なくなったのだ。
「な・・・に?」
トスッ・・・。
空振りした護堂は、体勢を立て直そうと足を踏み出した。しかしその瞬間、とても軽い音と共に、再び護堂の心臓は貫かれた。・・・背後から突き出された、異形の腕によって。
「ガ・・・ハッ・・・!」
彼の体を貫くその腕が引き抜かれると共に、再生が始まる。・・・しかし、それまでに受けた痛みが消える訳ではないのだ。ジクジクジクジクと、神経が貫かれる痛みを覚えてしまっている。傷が治っても、その幻痛が消えないのだ。既に、常人では発狂してもおかしくない程の痛みを、彼はその身で味わっていた。
(い、痛い・・・な・・・!)
・・・ここで、彼の神器”神墜としの魔道書”が奪った権能に付いて説明をしよう。
この神器がナイアーラトテップから簒奪した権能は、ある意味では、彼女の持つ様々な
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