第二部
第一章 〜暗雲〜
九十五 〜猛将たち〜
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敵兵が一人、宙を舞っていた。
その向こうに見える扉。
その前に、一人の将が立ち塞がっていた。
身体には数本の矢を受け、その顔や鎧は返り血に染まっている。
「あ、あれは……」
「閃嘩(華雄)、だな」
義経を守る弁慶もかくや、と思わせる光景であった。
「何進殿。風を頼みます」
「わかった、任せておけ」
風を下ろし、兼定を抜いた。
「疾風。私が合図したら敵に斬り込め」
「御意!」
疾風が回り込むのを待ち、懐から取り出した物を敵に投げ付けた。
敵に当たったそれは、派手な音を立てて破裂する。
「うわっ!」
「な、何だ?」
敵に動揺が走るのを見て取って、片手を掲げた。
「土方軍が将、徐公明見参!」
名乗りを上げ、疾風が大斧を一閃。
疲労を感じさせぬその動きに、敵兵はバタバタと倒れていく。
「閃嘩!」
「と、歳三様!」
閃嘩の顔に、一瞬だけ安堵が浮かんだ。
そして、
「遊びは此処までだ! 死ねっ!」
まさに鬼神の如く、暴れ始めた。
無論、私もただ傍観を決め込むつもりはない。
「おらっ、喧嘩上等だ! かかってきやがれ!」
啖呵を切り、手近な敵を薙ぎ払った。
ふっ、昔を思い出すな。
「おおー、お兄さんがいつもと違うのですー」
「そ、そのようだな……」
風と何進が目を白黒させているようだ。
……まぁ、確かめるのは後で良いが。
数百はいたであろう敵は、四半刻も経たぬうちに壊滅した。
まさに、死屍累々という光景だ。
「ハアッ、ハアッ……」
「ぜえ、ぜえ……。せ、閃嘩、大丈夫か?」
「お、お前こそ辛そうだぞ、疾風。ハァ、ハァ……」
私も兼定に血振りをくれ、鞘に収めた。
「二人ともご苦労だった。閃嘩、月は中にいるのだな?」
「は、はい!」
「わかった。風、閃嘩の手当を頼む」
「はいー」
戸を開き、中を覗き込んだ。
「お、お父様?」
「え? と、歳三がどうして?」
月と詠が、私を見て驚いている。
「二人とも、怪我はないか?」
「……は、はい」
「良かった……助かったみたいね」
安堵の溜息を漏らす二人。
「月!」
「何進様?」
「おお、無事のようだな。良かった、本当に良かった」
月に駆け寄り、その身体を抱きしめる何進。
……まるで、実の父親のようだな。
「月、陛下は?」
「……わかりません。駆けつけようとしたところに、部屋を囲まれてしまいまして」
「咄嗟に閃嘩がボク達を部屋に戻して、戸に立ち塞がったのよ」
「ええ。閃嘩さん、ありがとうございます」
「……いえ。月様がご無事で、本当に……」
ドサリと閃嘩が倒れ伏した。
「閃嘩さん!」
「息はあります。どうやら、気力が限界だったようですね」
「疾風、お前
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