初耳
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「そう、筒井さん休みなの」
先に視聴覚室兼部室に着いていた佐為は、折り畳み碁盤を机に広げて棋譜並べをしていた。あかりが来たのは数分後で、筒井さんの休みの知らせを聞いて肩を落とした。
「そう、藤崎さん、公宏がこの前の写真渡しておいてねって・・・」
佐為は自分の鞄を引き寄せ、中からファイルを取り出し写真を引き抜いた。あかりはそれを受け取るとぱっと明るくなる。
「棋院の?わー、嬉しいっ。あ、芦原プロとの写真も」
「ね、その写真の公宏、顔が引きつってません?」
確かに対局室で撮ってもらった写真には、筒井さんが芦原に肩を抱かれてカチンコチンになっている様子が写っていた。指摘されてあかりは大声で笑う。
「ほんとだ!筒井さんったら写真撮られるときずっとこうだったのかな」
写真を注視して、他にも緊張しているところがないかあかりは探し始めた。
「そういえば芦原さんに二枚もサイン書いてもらってたよね」
「飾る用と保管用でしょう?」
「あ、あと囲碁の本にも書いてもらってた!」
筒井さんの芦原ファンぶりに二人は声を出してけらけら笑った。笑いに一段落ついて、棋院の話などをしながら碁盤と碁石の用意をして打ち始める。
「お願いします」
「お願いします」
あかりと佐為が打つときはいつも置き碁で打っている。あかりは佐為にとって妹のような存在で、一緒に居ると自然と落ちつくような女の子だ。置き碁でもいつも佐為に負かされるが、悔しがるあかりが佐為は可愛くてしようがなかった。
「そういえば今月ヒカルの誕生日なの」
「ヒカルの?」
佐為には初耳で、興味が湧く。
「うん、20日。今週にでも何か買いに行こうかなって」
「そう、ヒカルの誕生日・・・」
私も何か贈ったほうがいいかもしれない。ヒカルにはお世話になっているし。そして佐為はヒカルの欲しいものに考えを巡らすが、なかなか思いつかない。碁関係の本?リュックとか?
「・・・ヒカルの欲しいものって、分かります?」
そう聞かれて、あかりは顎に手をあてて、難しそうに唸る。
「私もあんまり分からないんだよね。だからタオルとかコップとか、実用的なものにしてるの」
中学を卒業してからヒカルとはめっきり会うことが少なくなったあかり。たまにヒカルの家に碁を打ってもらいに行くがそれだけで、普段のヒカルなど中学時代の思い出しか参考にならないほどだった。正直佐為がヒカルとこんなに仲良くなっていたなんてこの前初めて知り、少しだけ佐為に妬いている。そう思っていたところに、佐為が一瞬盤面に向かう手を止め、あかりの顔を見上げた。
「好きな色は・・・黄色ですよね?」
「そうなのかな、どうして?」
「髪が黄色いから、イメー
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