第32話 本当の強さとは諦めの悪い事
[15/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
(ばっきゃろう! そんな所で諦める奴が居るか!)
「え!」
声が響いた。聞き覚えのある、とても懐かしい声だった。今まで自分を見つめて、見守ってきてくれた声だった。
(仮にも俺の娘を名乗ってるんだったらこんな所で投げ出すんじゃねぇ! こんなとこで諦めるんじゃねぇ! 最期の最期まで醜く抗いて見せろ! 途中が醜くたって、途中が汚くたって、最期が綺麗ならそれで良いじゃねぇか!)
「この声……お父さん!」
そう、聞こえてきたのは銀時の声だった。それに続いて様々な人たちの声が響いてくる。
新八が、神楽が、他にも江戸の多くの人達の声が聞こえて来る。
それだけじゃない。他にも聞こえて来る。
(諦めないで、まだ君は死んでないよ!)
「フェイトちゃん!」
(私の目が黒い内は、そんな所へなんて行かせないからね! 意地でも戻ってきな!)
「アルフさん!」
聞こえてきたのはフェイトとアルフの声だった。その他にも、この世界で知り合ってきた人達の声が聞こえて来る。
誰もが同じだ、皆自分を励ましている。自分を叱咤している。
此処で諦めるなと。まだ死んでないと。まだ立ち上がれると。
「聞こえる。皆の声が……私を呼ぶ皆の声が聞こえる。私はまだ……まだ、死んでない。まだ、死にたくない!」
体中に力を込める。今まで取り囲んでいた死人達の腕を振り払い前へと進む。
【何故だ。何故俺達の仲間にならない!】
【生きていたって苦しい事ばかりしかないんだぞ! 死んだ方が楽なんだぞ!】
【そうだ、俺達の仲間になれ! そうすればずっと仲間で居られる。寂しいことなんてないんだぞ!】
「折角だけど、今は良いよ」
振り返り、死人達の方を見る。その顔には、今までにあった優しい笑みが蘇っていた。
「だって私、まだ生きてやりたい事一杯あるし。それに、向こうにも沢山友達が居るから、寂しくなんてないよ」
【……】
その言葉を聞くと、死人達は黙り込んでしまった。そして、伸ばしていた手を徐々に引き始めていく。
【折角仲間に入れてやろうと思ったのに、そんなに苦しみたいんだったら苦しめば良い】
【そうだ、散々苦しんだ後に来い。そうすればきっと】
【どうせ何時かはこっちに来るんだ。近い内に必ず】
そう言い残すと、死人達は見えなくなってしまった。再び静寂の闇がなのはを包み込む。
だが、今のなのはの心に寂しさなど感じない。今は、只前に向かい歩き進める事しか考えられなかった。
その先に、きっと皆が待っている。そう信じて。
どれ程歩いた後だろうか。目の前に一筋の光が見えた。とても小さな光だが、この闇しかない世界ではとても有り難い光だった。
その光に向かい、なのはは歩く。ただひたすらに歩く。歩
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ