第32話 本当の強さとは諦めの悪い事
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はなく何回も何回もだ。
壁の周囲に亀裂が走る。岩が砕けた際に起こった噴霧のせいで安否が確認出来ない。
どれ程殴った後だろうか。怪物が壁から離れる。それから数秒した後、壁から黒い物体が地面に向かい落下した。
アルフだった。全身ボロ雑巾の様にズタボロになった彼女は、物言わぬ存在となって地面に横たわっていた。
もう、何も言う筈がない。もう、何を言っても答えてはくれない。もう、私に微笑んではくれない。
「あ、あぁ……」
今度こそ、フェイトの心は完全に打ち砕かれてしまった。回りに居た仲間達は皆力尽き、地に伏していた。後残っているのは自分しか居ない。
だが、分かっていた。自分では勝てないと言う事を。恐らく、上階に向った真選組やクロノが来たとしても結果は同じだと見えた。
絶対的な脅威。圧倒的な敗北。それが目の前に聳え立っていた。それに加えて、大切な友達や仲間達の死が、血の匂いが、それら全てがフェイトの心を容赦なく、完膚なきまでに打ち砕いて行った。その場にへたり込み、フェイトは立ち上がる事さえ出来なかった。
そんなフェイトに向い、怪物が迫り来る。怪物の影がフェイトを黒く染めていく。
怪物の右拳が堅く握られ、頭上に持ち上げられる。後する事は分かっている。このままあの拳を振り下ろし、フェイトを物言わぬ肉の塊へと変えるだけだ。
何てこと無い。一瞬で終わる簡単な作業だ。そして、その作業の先に待っているのは、確実なる死だけだった。
フェイトは、それに抗おうとはしなかった。それに立ち向かおうとはしなかった。心が打ち砕かれてしまっていた彼女に、それを抗う事も、それを拒絶する事も、最早出来なかったのだ。
怪物の拳が、弾丸の如く振り下ろされた。
***
暗い、それだけだった。
回りには何も見えないし、何も聞こえないし、何も感じない。今、自分がどうなっているのかさえ分からない。
歩いているのか? 立っているのか? 倒れているのか? 生きているのか? 死んでいるのか?
それさえ分からない状況だった。
ただ、自分がこうして此処に居る、それだけは分かる。
(私……そうか、あの化け物に食べられて……)
余りはっきりしない意識の中で、自分の置かれてる状況を、なのはは理解した。
あの時、鮮明に覚えている光景。巨大な怪物の口の中に吸い込まれていき、それっきり何も見ていない。
(そっか、それじゃ此処って……)
既に自分がどうなったか、幼いながらも粗方理解は出来た。
死、それしか頭の中に浮かんではこなかった。
だが、不思議と恐怖は感じなかった。死後の世界とはどんな世界なのだろうか?
寧ろそんな興味が沸いて来ていた。もしかしたら、楽しい世界なのかも
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