第六話 一時の空白
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
オーブに無事たどり着いたミネルバクルーは僅かな休息の時を過ごしていた。ルナマリアやメイリンはショッピングをショーンやデイル、ヨウラン、ヴィーノ達はカラオケやボウリングといった娯楽施設に、そしてシンはマーレと共にドライブをしていた。
「なあ、シン」
「―――何ですか?」
シンはこの島に、オーブに来てから機嫌をずっと悪くしていた。その苛立ちが目に見えて明らかだったせいもあり、マーレ以外彼と共に行動しようと話しかけてきた人はいなかった。
「お前はさ、結局ここをどう思ってるんだ?」
マーレはシンのことを嫌ってはいない。寧ろ、個人的に気に入ってる。ナチュラルは抹殺されるべきだと思っているマーレだが、別にオーブを滅ぼそうとかそう考えてるわけじゃない。いや、内心では可能ならそうしたいという気持ちもあるが、だからと言って行動に移そうとは思わない。
そういう意味ではシンの故郷であるオーブに対し、シン自身はどういった感情を向けているのか気になるのだ。
「……理念だけの国さ―――」
そうはっきりと言う。シンは自身の感情の根底に子供っぽさを持っていることを自覚している。クラウがそういったことを時々指摘していたからだ。
「父さんも、母さんも、マユも……この国にいた人間は皆この国の理想を信じてた。他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、如何なる状況にあっても中立を貫く―――立派なことだと思うよ、実際。でもさ、結局俺達はその理念と心中させられた。俺達みたいな国の人間よりもオーブは理念を重視したんだ。
だから俺は、もう失わないって、守るって決めたんだ。あんな悲劇をもう起こさせないために……」
悲痛な弱弱しい声でシンは自分の意見を主張する。マーレはその様子を見て、目を逸らす。ナチュラル嫌いの彼ではあるがシンの家族を嫌うほど非情ではない。死者を憎む気持ちはないし、生きていたとしても積極的に嫌うようなことはないだろうとすら思ってしまう。
そこから会話は無かった。マーレは黙って車を運転し、シンはその感情に静かに涙をこぼす。そしてドライブの目的地にたどり着く。シンが頼んだ場所。そこは慰霊碑と花が咲く波打ち際だった。
「ッ――――――」
かつてここに何があったのか。マーレは想像がついてしまう。戦火の爪痕が残っていたのだろう。シンが苦しんだ戦場だったのだろう。その名残はもうない。ただ、花が世界を誤魔化すかのように飾られているだけだ。
そこに一人の茶髪の青年がいた。柔らかな風貌と落ち着いた物腰。彼はそこで佇んでいた。
「慰霊碑ですか?」
シンがその青年に声を掛ける。
「うん、でもせっかく花が咲いたのに、波をかぶったからまた枯れちゃうね」
波打ち際の花はユニウスセブン落下の影響で潮を被ったのだろう。既に一部の草木は
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ