追憶
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川神千李という人物は今をみれば昔もこのような性格だったのではないかと言うことがうかがえる。しかし、彼女の幼少期と言うものはとても人に言えたようなものではなかった。
現在から遡りおよそ12年前、千李がまだ小学校にも通っていなかった時。
今から始まるのは千李の過去の話である――――
「そこまで!勝負あり!!――勝者川神千李!!」
川神院に響いたのは鉄心の声だった。その視線の先には川神院の修行僧とは違う、所謂挑戦者が伸びていた。男の近くにいるのは黒髪をたなびかせている千李の姿があった。
「ようやった千李。もう降りてよいぞ」
試合を終えた千李に鉄心がいたわりの声をかけるが、千李はそれを無視し男の喉笛を掴むと片手で持ち上げ、力をこめ始めた。それにより男は苦しそうにもがき始めるが千李は見えていないかのように力を緩めることをしなかった。それどころか手にどんどんと力がこめられているようだった。
「やめろ!千李!!」
「……」
あわてた様子の鉄心の声にも千李は耳を貸さず力を緩めない。
――――いかん。あのままでは!!
鉄心は一息で千李の下へ行くと、千李が掴みあげていた男を救出する。男は失神していたものの何とか無事のようだ。
「なにすんだよクソジジイ。せっかくたのしいところだったのに」
「楽しいじゃと……?」
「ああ……。死ぬか生きるかギリギリのところでとめようと思ってたのに、失敗しちゃったじゃねーか」
冷笑を浮かべながら言う千李に鉄心は恐怖を覚えた。なにせ発せられている気が人のそれとはまったく違うようなものだったのだ。それはまるで巨大な闇の奔流があたりを包むような感覚だった。
それに当てられたのか周りにいた修行僧の数名が膝を突き次々に倒れ付していく。
「あーらら、こんなんも耐えられないのかよ?もうちょっと鍛えた方がいいと思うぜーお前らー」
周りが倒れ付していくのに対し千李はケタケタと笑う。その様子に立っていたものでさえその顔を蒼白に染め上げる。
「そんなに戦いてーなら俺が相手してやるぜ千李?」
だが1人の男が千李の気の本流をものともせずにやってきた。
「釈迦堂さん……いいですよ。じゃあおねがいします」
「おう。かかってこいや」
身構える二人だがそこに鉄心が割ってはいる。二人は怪訝そうな顔をするが鉄心は強めに告げた。
「そこまでにしておけよお主等。怪我をしとうなければの」
言葉に反応してか釈迦堂は後ろに一歩引くが、千李は逆に恍惚とした表情をしていた。
「やっとその気になったかジジイ。……じゃあやろうぜ」
「やるかバカもん。少しは頭を冷して来い」
呆れ顔で言いながら鉄心は千
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