第五話 狂気と破滅
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「これ以上の追撃は無理ね……」
ミネルバの艦長であるタリア・グラディスは損害状況を見て、そう判断する。左舷のエンジンは被害が大きく、CIWSもミサイルを迎撃する最中、デブリとの衝突で幾つか使えなくなっている。MSも撃墜や大破したものこそいないものの、中破、小破している機体は多い。このまま整備せずにすぐに発進可能なのはパーツを変えれるインパルス位だろう。
「本艦はこれをもってボギーワンの追跡を終了いたします。議長、よろしいでしょうか?」
口調こそ疑問形だがはっきりとこれ以上の追撃は無理だと目線で告げる。
「止むを得んさ。皆、尽力してくれたことに変わりはない。我々に運がなかったと言うことなのだろう」
普段と変わることのない柔和な笑みを浮かべながら、ミネルバクルーを労う言葉を言う。計算された人誑しっぷりにクラウは苦笑いを隠せずにいた。
「所で、これ以上の追撃が不可能といっても港へ戻るのは時間が掛かるだろう。その間、姫に我が艦を見せたいと思うのだが構わないかね?」
「議長、それは……」
最新鋭の兵器を他国の人間に見せるというのは示威行為としてはともかく、情報を盗まれる可能性もあるためあまり喜ばしくない。そう思いタリアは口ごもるものの、議長は意見を変えるつもりはなく、そのまま説得して艦内を案内することになった。
◇
ザク、グフ、ゲルググと量産される機体の違いというものは数多くあるが、その一つに機密性の違いが存在する。既に量産されているザクは機密性は他のMSとあまり差異はないと言えるだろう。
未だ配備の為に量産が間に合っていないグフは他のMS生産とは独立している部分もあり機密性が高い。
では、ゲルググの機密性は如何なのか?答えはややグフ寄りと言った所だろうか。他国に見せるほど公開はされていないが、その存在自体は確認出来る程度の機体だ。度合いでいうならセカンドシリーズの方が機密度は高いだろう。
「そんなセカンドシリーズの運用を目的としているミネルバ艦内を案内させるなんて、議長も何を考えてるのやら……」
今日になって何度目か分からない溜息をつきながら俺は客室で椅子に腰を掛ける。丸テーブルにコースターとロックグラスを置き、適当に貰ってきた酒を注ぎ込む。議長はカガリ首相とアスランを案内しに格納庫までいったのだろう。流石に案内役を命じられることもなかったので部屋で暇をつぶしている。
「ユニウスセブン……」
確か、この後にこれが落とされるはずだ。これで戦争が始まる。ゲルググは人殺しの兵器として大層活躍するだろう。それはなんて―――
「―――素晴らしい事じゃないか」
兵器が兵器として真っ当に活躍する。まさに技術者冥利に尽きる。戦闘データが手に入れば、ますます強化すること
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