五十六 贖罪
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験者の名や写真が載ってある中忍試験登録書。そこに載っていたナルトの写真はストレートの赤い髪だった為、本人だと気づけなかったのだ。人は髪の色や髪型が違うだけで別人に見える。
自身をうずまきナルトだと認識した者にだけ髪が変わったように見える術を、事前にナルトが仕掛けておいたのである。
だからヒルゼンの瞳に映ったのは、うずまきクシナに似た、ストレートな紅き髪の少年。彼以外の人間は普通に金髪の少年に見える為、みたらしアンコに心配されたのだ。
「お蔭でボケとると思われたじゃろうが!」
「すまない。けれど、これではっきりした」
そう言いながらナルトはヒルゼンの身体に手を翳した。途端、大蛇丸との戦闘による傷が、両足以外、みるみるうちに癒されてゆく。全身に突き刺された刀傷までもが消えていくのを目の当たりにし、驚くヒルゼンにナルトは囁いた。
「…やはり貴方だったんですね」
神農に関してと村が焼けてからの記憶を、術で村人の頭から綺麗に抜き取る。それと同じ術を木ノ葉の里中に施した張本人を、ナルトは見つめた。
「うずまきナルトの存在を消したのは」
ナルトが知りたかった事は、誰が自分を憶えているかだった。
だから彼は術を掛けた。自分がうずまきナルトだと認識する者を突き止める為に。
結果、ナルトに気づいたのは、目前の三代目火影―――猿飛ヒルゼンのみ。
つまりヒルゼンの記憶を消したのではなく、ヒルゼンが記憶を消したのである。
うずまきナルトを知る者全てから、彼の記憶を。
「流石、プロフェッサー。その術をも会得しておいでだったか。その禁術を」
特に咎めもしないナルトの言葉がヒルゼンには辛かった。唇を噛み締めていた彼は、俯きながらぽつぽつと言葉を紡ぐ。
「人道に反する事だとは思う。だが憔悴していくあの子を見るのは忍びなかったのじゃ…」
あの子。その一語にナルトの肩がぴくりと跳ねる。
「あの子はお主がいなくなってから酷かった。おにいちゃんおにいちゃんと泣いて口も利かなくなって…終いには何一つ口にせんようになった。痩せ衰え、何時も泣いていたあの子を―――ナルの記憶を、わしは……」
「…………」
「不本意だったが、お主を知る者全てから、お主に関する記憶を封印した。ナルの記憶が消えても他の者が憶えていては益々苦しめる事になる。なぜ自分だけが知らないのか、と…。だからこの里でお主の事を知っているのはわしだけじゃ。ある条件を満たさぬ限りのう」
ヒルゼンの言葉を引き継いで、ナルトは口を開いた。何の気も無しに告げる。
「三代目、貴方が死なぬ限り…ということか」
沈黙が落ちる。
周囲を囲む木々だけがその場の重苦しい空気に反して生き生
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