五十六 贖罪
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空は灰色だった。
地上をくすんだ色に塗り替える雨雲。それは里全てを呑み込み、人々に帰路を急がせる。
当初細かかった雨粒は今や激しさを増し、けぶるような雨へと変わっている。
しかしそんな雨の中、最近再び火影の座に就いた彼はなぜか一人で歩いていた。
人一人いなくなった里。容赦なく肩を濡らされつつも、老人は護衛もつけずに捜し続けていた。誕生日だというのに、独りで心細い思いをしているであろう幼子を。
暫くすると雨音に雑じり、何かが軋むような音がした。続いて誰かのすすり泣く声を耳にし、彼は音のする方へ目を向ける。
煙雨の彼方。翳む視界の中、ブランコが微かに揺れている。そこでは老人の捜し人が膝を抱えて泣いていた。以前よりずっと細くなった肩が小刻みに震えている。
嗚咽と共に零れたか細い声が老人の心を大きく打った。
「……おにいちゃん…どこお……?」
その時、老人――三代目火影・猿飛ヒルゼンは決意した。
自らが一生かけても償い切れない罪を。後悔を。覚悟を。
死ぬまで背負い続けると。
「貸し一だ、大蛇丸」
鮮やかな金が踊る。
突如空からふわりと降りてきた少年は、その場に張り詰めていた緊張を物ともせず、静かに周囲を見渡した。ヒルゼンの背後に目を留める。
一方、突然現れたその存在に、敵対していたはずの両者は共に驚愕で目を見開いていた。
木ノ葉の暗部すら進入を許さぬ【四紫炎陣】。それを易々と通り抜けてきたナルトに言葉を失っていた大蛇丸がようやっと我に返った。自らの身体を見下ろす。
引き摺り抜かれていた魂の半分は既に死神に持っていかれた。両腕が動かぬのが何よりの証拠だ。けれどナルトが来なければ、今やあの世行きだっただろう。いや、もっと悪い事に死神の腹の中だったかもしれない。
てっきり死んでしまうのだと諦めすら覚えていた大蛇丸は、いきなり現れたナルトに感謝の念を抱いた。
「助かったわ……」
切実に呟く。大蛇丸の言葉を聞いているのかいないのか、ナルトはただじっと死神を見据えていた。大蛇丸に背を向けたまま、一言告げる。
「今が引き際だ。とっとと行け」
振り返る素振りすら見せないナルトの背中を見ながら、大蛇丸は暫し思案する。
腕を代償にした自分に比べ、命を代償にした猿飛ヒルゼンはもはや放っておいても死ぬだろう。それに今は、この腕の焼けつくような痛みをどうにかするほうが先だ。
「――――借りは必ず返すわ…」
ここはナルトの言葉に従おうと、大蛇丸は音の四人衆に撤退の号令をかけた。
結界から退いた大蛇丸及び音の四人衆。
術者がいなくなった為、【四紫炎陣】は解かれるはずだが、未だ屋根上
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