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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:召喚とは
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「・・・熊美さんの他にも再召喚された例ってあるんですか?」
「ええ。過去に偉大な大魔術士の方々が、自叙伝や著書などで、その記録を残しております」

 漸く『召喚』における全貌が理解出来てきた。つまり『召喚』とは、何かを強制的に目の前に転送する魔法なのだ。一瞬だけ世界の門をこじ開けて何かを呼び、帰還させる際には契約という形を経て鍵を与え、世界の門を開く。これがおそらく『召喚』における概略であろう。
 それにしても召喚とは、一方的な代物であるようだ。常に召喚者の事情が優先され、召喚されたものの事情に対しては二の次である。使役されるのを嫌った際には『ペシデの極地』という、強烈な脅し文句を使えばいい。異世界に飛ばされた事に動揺していれば、冷静に物を考える事も出来まい。そんな状況下では、目の前に垂れさがった餌が明らかにリスキーな選択とはいえ、それで助かるならと食い付かない訳にはいかないだろう。帰還した後でも召喚者の都合で再び呼ばれるとあっては、最早哀れとしかいいようが無い。

(・・・って、俺もいつかは契約を結ばなくちゃいけないのか。うわぁ・・・嫌だなぁ)

 将来は自分も契約を結ぶ。その時、契約の相手が意地の悪い奴だったらどうしよう。帰還しても呼ばれ、帰還しても呼ばれ・・・。逆上して召喚者を殺しても、元の世界に帰れる保証はどこにも無い。それどころか人殺しの噂が伝わり誰も助けてくれなくなる事もあり得るだろう。慧卓が出来る事とすれば、契約を結んでくれる召喚者がまともな人間であるよう、祈るくらいであった。
 話に区切りを打って、コーデリアは尋ねてきた。

「・・・ここまで話しておいてなんですが・・・ケイタク様はどうされたいのですか?」
「どうって?」
「・・・『帰還』の魔術を経て、元の世界へ帰りたいのですか?ケイタク様が帰られるのならば・・・私はそれを受け入れる心算です。契約だけ結ばせて、二度と『再召喚』はしません。器はどこか誰の手も付かないような、宝物殿の中にでも秘匿しておきます。ケイタク様は将来、二度と『セラム』から影響を受けず、元の世界で生きられます。
 ・・・どうされますか?」

 これこそが、彼女が慧卓を尋ねた本当の理由だろう。『セラム』に留まるか、留まらないか。慧卓はコーデリアの真摯で、水平線に浮かぶ星のようにどこまでも綺麗な瞳を見て、そっと視線を逸らして考え込む。
 コーデリアは何も言わず、ただ不安そうにしながら答えを待つ。コーデリアの御淑やかな胸中には、暗礁のさざ波のようにざわめきが立っている。過去に尊大な魔術士が幾人も召喚されたものによって殺害されている事を、彼女は知っていた。それだけに慧卓が暴走して自らや仲間を傷つけないかが心配なのだ。
 
 ーーー本当にそうなのか?本当は慧卓に帰って欲しくないのではないか?
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