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剣風覇伝
第十三話「神託」
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る。ごめんなさい。あなたはこうでもしないと必ず追ってくると思うから。そしてこれは私からのせめてものはからい」
ルシアはその手から闇色の波動を放った、その波動はタチカゼの視力と意識を奪った。タチカゼは一瞬にして闇の中に閉じ込められた。
「な・・・・・・何を、何・・・・・・だ?目・・・・・・っが!くっ何・・・・・・も見え・・・・・・な・・・・・・い」
「あなたの視力と意識を一時的に奪いました。あなたがもしこの隔たりを超えようとして闇の中に落ちるとあなたは死んでしまうからそれはなんだかされたくないので」
 意識が閉ざされ、そしてしばし暗い世界がタチカゼを立ち止まらせた。その間、タチカゼは眠りに落ちているようだった。そしてだんだん、明るさが世界を照らし始めた。ルシアのあの哀しい唄が聞こえる。クドロワが娘の前で泣いて地面に伏している。ルシアはゆっくり涙しながらでもクドロワから決して目を離さず人知れず死神の鎌を振った。そしてその瞬間強い光があたりを照らしクドロワが天に召されていく。見知らぬ女性がそれを迎え、タチカゼにはその女性が天女に見えた。クドロワが女性を見てその者の名を呼んだ。
「エレナ・・・・・・」
 女性は答えるかわりに見惚れるくらいまぶしい笑みで微笑み返し、クドロワの手をとって天へと昇っていく。
 それを見ていたルシアは静かに大鎌を闇の中に放る。だれかがそれを受け取る。すると、ルシアは死神の衣を静かに脱ぎ捨てた。ルシアはそしてやっと明るい女の子らしい顔になって笑った父を屠った事に涙は流していたがそれでも笑った、笑ったのだ。もはやルシアは死神の任から解かれ父と母の待つ天上へと上がっていった。笑い声があたりに響くエレナ、クドロワそしてルシアその三人の笑顔が見えた、ような気がした。
 そして意識が戻ると自分はさっきの城の道の途中にいた。意識をタチカゼは取りもどした。
そして、気づくと泣いていた。声を出して。
 なんだか分からない憤りのなかで自分が許せないタチカゼが地面に突っ伏してなんども地面を拳に血がにじんでも打ち続けた。何度も何度も。
 城の空は青く晴れ渡っていた。まるで何十年も青空を忘れていて、今さっき思い出したかのように。

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