暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
誰かを想うカタチ
[3/7]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
の認識しか持っていない、筈である。
少なくとも、関係の無い色恋沙汰に干渉して、感情を荒げる程密接な関わりがあった訳ではない。
そもそも彼女は人生の半分を我慢に費やしていたと同義の生き方を貫いてきたのだ。今更この程度の事で心乱すなんて、本来ならば有り得ない。
だが、現に彼女は、はたてとシロウが恋人同士の付き合いをする光景を幻視した瞬間、我を忘れている。
そして、理不尽とも言える筋の通っていない子供の理屈で、二人の仲を引き裂こうとした。
そんな自分を愚かだと内心罵りつつも、その行動に後悔の念は欠片も抱いていないという矛盾めいた感情が、自身を惑わせる。
表現などで用いられる、心の中にいる天使と悪魔のような心境の対立は、互いが引けを取ることなく均一な力関係で成り立っている。
逆に言えば、ほんの少しの切っ掛けでその均衡は瓦解しかねない、ということでもある。
そんな不安定な自身の心を前に、不安を隠せない。
自分なのに自分じゃないという感覚。望んで自らを偽っていた時とは違い、自分自身制御できない感覚に恐怖する。
「ここにいたのか」
独りで居たい思った矢先に掛けられる背後からの声。
振り向くと、そこには心配そうに早苗を見つめるシロウの姿があった。
「ど、うしてここに?」
予想外の登場人物を前に、思考が精彩を欠いていく。
それこそ、こんな単純な疑問すら言うのがやっとというくらいには、彼女は混乱していた。
「はたてが居間に来たにも関わらず、君は来なかったから探しに来た。ただそれだけだよ」
「そう、ですか。それだけ、ですか」
それだけ、という言葉が今は何故か針のように心を刺す。
こんなの、彼の言葉選びからすればいつものことだというのに。
当のシロウはそれ以上何も言わず、ただ静かに早苗の横に並び立つ。
言葉を交わす訳でも、早苗の顔を伺うこともせず、ただ彼女と同じ目線を辿り続ける。
その静けさが、彼女にとってもどかしく、言いようのない圧力とさえ感じてしまう。
何とかして話題を出さないと、言いたくないことまで言ってしまいそうだと、焦りを覚える。
「その、はたてさんとはお付き合いなさるんですか?」
結局、これぐらいしか話題は思いつかなかった。
タイムリーであり、今の彼女にとっての不安の根源とも言える話題故に、言葉は淀みなく紡がれる。
「ああ、そのことだが――丁重に断らせてもらったよ」
「――――へ?」
いやにあっさりと、彼は答えた。
表情を伺うも、決断に後悔も未練も感じられない。いつも通りの彼がそこにいる。
「どうしてですか?別に、付き合うぐらい問題があるようには――」
「そうだな。私は別にはたてという少女に対して悪感情は抱いていない。だが、好意があるかと言えば、そうで
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ