第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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うに顔を伏せたルイズに、アンリエッタは微笑ましく思い口元を緩ませる。
「しかし、確かゲルマニアのツェルプストーと言えば、ヴァリエール家と犬猿の仲だと聞きましたが……」
「うっ、そ、それは……確かにそうですが、しかし―――」
もごもごと口を動かし何やら小さな声でぶつぶつ呟くルイズに、アンリエッタは慌てて両手と首を横に振った。
「あ、ああっ! 別に無理して話さなくてもいいですから。……でも、事情を知っているのなら、一度話してみたいものですね。その方たちは今は何処に?」
「あ〜……それは……」
アンリエッタの何も知らない穢れのない瞳が痛いとでも言うように、ルイズの視線が逸らされる。逸らした先にあった士郎の目と視線が合うと、ルイズは覚悟を決めたかのような重いため息を吐くと、ゆっくりと錆付いたような口元を動かした。
「今頃は学院にいると思います」
「そうですか。それは残念で……どうかしたんですか?」
突然疲れたように顔と肩を落としたルイズに、アンリエッタが戸惑いの声を上げる。
ルイズは執務室のドアの向こうに視線を向けた後、引きつらせた顔をアンリエッタに向けた。
「実は三人ともわたしたちについて行きたがったんですが、それをアニエス隊長が無理やり学院行きの竜籠の中に押し込んでしまい……なので学院に戻った後が少し怖く……とばっちりがわたしに来そうで……」
ハハハ……と乾いた笑いを浮かべるルイズに、アンリエッタも乾いた笑みを浮かべた。
この話題は駄目だと判断したアンリエッタは、ルイズの後ろで同じように乾いた笑みを浮かべる人物に視線を向ける。
自分に向けられる視線に気付いたのか、士郎が首を動かすとアンリエッタと目が合った。
「っ!」
心臓が大きく脈打つのを感じたアンリエッタは、顔に血が上るのを自覚しながらもゆっくりと士郎に向かって歩き出す。
震える身体が転ばないように、必要以上にゆっくりと足を動かしながら。
「っ、し、シロウさん。お、オヒサシブリデス」
士郎の前に立ったアンリエッタは、異様に硬い声で話しかける。
「あ、ああ。久しぶりだ、な」
「は、はい」
そこで話が途切れ沈黙が執務室に満ちる。
いたたまれず、アンリエッタは咄嗟に顔を伏せてしまう。
アンリエッタはますます顔に血が昇っていくのを感じながら、用意していた話をしようと必死に口を動かそうとするが、口からを何も言葉が出てこない。
何か話さなければと気ばかりが逸り、せっかく準備していた話が出来ずにいると。
「大丈夫か?」
「はっ、ははいっ! 大丈夫です!」
士郎に声を掛けられ、反射的に顔を上げたアンリエッタは、目の前にある士郎の顔に気付くと、一気に首まで顔を赤くした。
突
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