第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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縋りついていたアンリエッタが、恐る恐ると涙に濡れる瞳を上に向ける。
「はい、何ですか」
そこには優しく微笑むルイズの顔があった。
まだ幼さが抜けきらない顔には、まるで慈母のような笑みが浮かんでいる。包み込むような柔らかさと暖かさに、知らず息を飲むアンリエッタ。
「ゆるし、て、くれるの?」
アンリエッタの質問にルイズは小さな苦笑を浮かべる。縋るようなアンリエッタの言葉と視線を受けたルイズは、アンリエッタの頬に伝う涙を指先で拭うと首を傾げてみせた。
「許すも何も、わたしは何も怒っていませんので。本来ならその質問には応えられないのですが」
いつの間にか、縋るようにルイズの身体に回されていたアンリエッタの腕は外れていた。
ルイズは一歩後ろに下がると、床に膝をつくアンリエッタに手を伸ばす。
「姫さまが聞きたそうですから仕方ありません」
差し出された手に反射的に手を出したアンリエッタは、ルイズの浮かべた悪戯っぽい笑みを見ると恥ずかしそうに顔を逸らした。
「もちろん許します」
全く気負いのない様子でルイズは笑う。
小さな失敗を謝る友人にそうするように、ルイズは何でもないことのように笑いながら許す。
その全く含みも裏もない笑みを浮かべるルイズの顔を、アンリエッタは丸く大きく開いた目で見つめている。
「なん、で、そんな、かんたんに、だって、しんで、たかも、しれないの―――」
震える声でルイズに問いかけるアンリエッタだったが、不意に息と共に続く言葉を飲み込んでしまう。
「そんなこと当たり前じゃないですか―――」
それは仕方がないことだろう。
「―――わたしたち―――」
何故ならば、それほどその時ルイズが浮かべた表情は、
「―――友達でしょ」
あまりにも綺麗な笑顔だったから。
「……ごめんなさい。もう大丈夫だから。ふふっ、なんだか久しぶりな気がするわ。あんなに泣いたのって」
「えっと、本当に大丈夫ですか?」
「もうっ、心配性ねルイズったら。本当に大丈夫よ。逆に調子がいいくらいなんだから」
心配気に声をかけ来るルイズに、アンリエッタは笑いながら首を振る。
先程、ルイズからの許しを受けたアンリエッタは、唐突に声を上げ泣きだしたのだが。
突然泣き出したアンリエッタに、ルイズは動揺し慌て始め。そんなルイズの身体をきつく抱き締め泣き続けたアンリエッタが、数分間泣き続けた後、ゆっくりと涙を拭いながら立ち上がった時には、その顔には明るい笑みが浮かんでいた。
「そうですか。なら、一つお話をしなければならないことがあるのですが」
笑いかけてくるアンリエッタ
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