第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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器を作るように広げた手のひらを見下ろしながら、アンリエッタは疲れた声を微かに開いた口から漏らすように呟く。
「その失ったものの中に、あなたが入っていたかもしれない。本当に……わたくしはなんと愚かだったのでしょうか」
「姫さ―――」
顔を伏せたアンリエッタの目尻から涙が零れ落ち、床に小さな滲みを作るのを見たルイズが、反射的に上げた声を、
「―――ルイズ」
顔を上げたアンリエッタのルイズの名を呼ぶ声が遮った。
中途半端なところで遮られたためか、ルイズの口は半開きのままで。そんな顔のルイズの下まで、アンリエッタは歩いて行くと、その小さな身体を力一杯抱き締めた。
「ごめんなさいルイズ。本当に……ごめんなさい。戦後の処理が忙しかったなんて言い訳にならないけど、直ぐにあなたに謝らなければいけなかったのに……」
「え、あの、姫さま。そ、そんな姫さまが謝られるようなことなど、わたしには一つも覚えがありません」
アンリエッタの抱きつかれ、万歳するように上げた両手を左右に振りながらルイズが焦った様子を見せる。
「いえ、あります。アルビオン侵攻軍の指揮をとった者たちに聞きました。彼らは足止めのために、あなたを殿軍を命じたと」
「それは……しかし、それは将軍たちが命じたことで、姫さまがそれを命じたわけでは……」
「殿軍を命じられた」という言葉に一瞬顔が強張ったが、直ぐに顔を小さく振って強張りをとると、ルイズはアンリエッタの肩に優しく手を置き囁きかける。
「そんなことはありません。将軍たちに、あなたの『虚無』を積極的に使用するよう命じていたのはわたくしです。彼らはわたくしの命令に従ってあなたに殿軍を命じたのです……ほんと、うに、すみません……あなた、になんといってわび、ればよい、のか……ごめん、なさい、るいず」
弱々しく首を横に振りながら、縋りつくようにルイズを抱き締めるアンリエッタが何度も何度も謝罪を口にする。弱々しく首を振るたびに、アンリエッタの瞳から漏れ出る涙が雫となって零れ落ち。謝罪の言葉は涙で濡れて濁りだす。
幼子のように抱きついてくるアンリエッタの姿に、ルイズはふっと柔らかな笑みを浮かべると、肩に置いていた手をずらし、
「大丈夫です。分っていますから」
ぎゅっ、と力を込めてアンリエッタの体を抱きすくめた。
強く強く。涙を流し震える身体を止めるように、アンリエッタの身体に回した腕に力を込める。
いつの間にか自分の胸に顔をうずめる様に泣いているアンリエッタの頭に頬を寄せると、ルイズは赤子に言い聞かせるように優しく囁きかけた。
「わたしは姫さまを信じていますから。だから、嫌いになったりしません」
「る、いず?」
何時からか床に膝をついた姿でルイズの胸に
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