第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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を指摘することなく艦長に向かって手を差し出す―――が。
「了解しました。それでは陛下のご命令により、あなた方をラ・ロシェールまでお送りいたします」
士郎の差し出した手に目を向けることなく船長は一つ敬礼をすると、後を後ろに立つ下士官に任せさっさと歩きだした。
「っ、一体何なのあの態度!? 全くむかつくわね!」
「そうですっ! シロウさんがいなければこの船だって無事じゃすまなかったっていうのにっ!」
「あの態度! まるで姫さまからの命令じゃなければ話もしたくないって様子で! あれ絶対舐めきってるわよシロウのこと! ねぇシロウ! 軽く締めてやりましょうよあれ!」
「いるんだよねぇ、ああいう奴。貴族以外は人間じゃないって考えを持つ奴。わたしはそういう奴が大っ嫌いでねぇ……船から落とそうか」
行き場を失った手を身体に引き戻した士郎は、首だけぐるりと後ろに向けると、去っていった艦長の背中に向け口々に文句を言うルイズたちに対し口を開いた。
「ああいう奴らは気にするだけ疲れるもんだ。それよりもさっさと船の中に入ろう。そろそろ出発するだろうからな」
士郎は近づいてくる荷物を預かろうとする下士官に対し、後ろにいるルイズたちの荷物を持つよう頼みながら、船に入るため歩きだす。先導する他の下士官の後をついて歩いていた士郎の耳に、後ろから駆け寄ってくるルイズたちの足音が聞こえてきた。
「ちょっとシロウっ待ちなさいよ!」
ルイズの声が響き、士郎の足が止まる。
その時、微かに足元の甲板が揺れた。
遠くから何かを叫ぶ人の声が響き、船のそこかしこから鈍く重い音が響き始める。
首を傾け後ろを見た士郎の目に、下士官に荷物を渡し手ぶらになったルイズが駆け寄ってくる姿と、段々と遠ざかっていく桟橋の姿が映った。
鉄塔のような桟橋との結束がほどかれ、ヴュセンタール号がゆっくりと動き出す。
船が動き出すと共に、風が強く吹き士郎の白い髪を大きく揺らした。突然の強風に目を閉じたルイズたちが、めくれかけるスカートの端を押さえている。
士郎はそんなルイズたちの後ろに映る、遠ざかるロサイスの街―――小さくなっていくアルビオンを目を細め見つめ。
強く吹く風に紛れて消える程の小さな声で、
「また・・・…な」
再会を誓った。
王宮のとある一室。
そこでは、一人の少女が古ぼけたライカ欅の机に両手を置き、縋るように寄りかかっていた。
一目で安物と分かる机の上に置いた手の人差し指が、少女の苛立ちを示すかのように机の上を何度も叩いている。
コンコンと奇妙にくぐもった音が響くのは、叩かれている机が安物だからだろうか。
鈍く響く机を叩く奇妙な音は、遮るものがな
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