第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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ではないからな。報奨など払う必要などない」
苦笑を浮かべた士郎の言葉により押し止められた。
望めば、いや、望まなくとも一生遊べるだけの報奨は貰えるだろう戦功を手にしたと言うにも関わらず、それを誇りもしなければ、利用しようともしない。
まるで荷物運びを手伝ったお礼を断るように気軽に首を振る士郎の姿に、利益や権利を得ようと日々擦り寄ってくる貴族たちの姿を知るアンリエッタの目が心地よさげに細まった。
「……やっぱり、あなたはそう言うのですね」
口の中で誰にも聞かれないように小さく呟くアンリエッタ。
報奨を断れたことに対し、アンリエッタに動揺はない。
何となく予想が出来ていたからだ。
士郎と話をしたことは、数える程しかなく、その人となりを理解するほどの付き合いがあるわけでもない。
しかし、何故かアンリエッタは報奨を断られるだろうと予想は出来ていた。
理由は……本当に分からない。
ただ、本当に何となくそんな気がしていたのだ……。
だから、
「いいえ、どうぞ受け取ってください。これは、きっとあなたの力になると思います」
アンリエッタは、そんな士郎にだからこそこれを渡そうと決めたのだ。
「力?」
アンリエッタの言葉に疑問を浮かべた士郎は、つい差し出された紙を受け取ってしまう。
受け取った紙に視線を落とした士郎の目が細まる。
左上と、一番下に上半分だけのトリステイン王家の百合紋花押が鎮座したその羊皮紙は、近衛騎士隊隊長の任命状であった。
「うそ、近衛騎士隊の任命状って……シロウが貴族になるってこと?」
士郎の横から紙を覗き込んだルイズの口から、呆然とした声が漏れる。
「はい。ただし、ただの近衛騎士ではありません」
ルイズの言葉に頷いたアンリエッタが口にした言葉に、任命状に視線を落としていた士郎の顔が上がる。
視線の先のアンリエッタは、何かを決意した強い目をしていた。
「ただの近衛騎士ではないとは?」
士郎が問いかけると、アンリエッタは薄く笑みを浮かべると自身の胸に手を当てた。
「そう、ですね。一言で言うならば、『自由騎士』とでも言うのでしょうか」
「『自由騎士』?」
アンリエッタの言葉に、ルイズが首を傾げる。
「はい。今後シロウさんが望めば、トリステインはあらゆる助勢を惜しみません。しかし、そのシロウさんに対し、わたくし、いえ、トリステインは何も命ずることは出来ません」
「しないではなく、出来ないのか」
士郎の探るような視線に、アンリエッタは強く頷く。
「はい。しないではなく、出来ないのです。これを」
アンリエッタは執務室
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