第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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うな船底に描かれた、まるで芸術品とも言える程緻密に描かれた幾何学模様であった。
通常の倍はあろうかという船の底に隙間なく描かれた幾何学模様は、この船がただの船ではないことを一目で悟らせるには十分に余りあり。見物客からは、何処の王家のものだという声が上がっていた。
そして、そんな騒がしい見物客の一番前にして、ヴュセンタール号の甲板から伸びたタラップの前に・・・・・・。
ぽかんと口と目を丸く開いた姿のルイズたちの姿があった。
「・・・・・・迎えに船を寄越すとあったが、まさかヴュセンタール号が来るとは・・・・・・陛下も思い切ったことをする」
ため息と同時にアニエスが呟くと、横に一列に並ぶように立った士郎たちの目が一斉に向けられた。
「う゛ゅ、ヴュセンタール号が迎えって、あ、有り得ないでしょ」
「は、はは・・・・・・確かにこれは凄いわね。でもまあ、シロウがやった功績を考えれば有り得なくはないじゃないかしら」
焦った様子のルイズを笑うキュルケであったが、傍目から見てもその笑いは引きつったものであった。
「そうですよっ! シロウさんは七万の軍勢を打ち破ったんですよ! それなら、これぐらいは当たり前ですっ!」
最初はルイズたちと同じく目を丸くして驚いていたシエスタだったが、これが士郎を迎えに来た船だと知ると、自分のことのようにはしゃぎ始めた。ルイズたちはそんなシエスタの姿を「よくはしゃげるものだ」と言うような、関心半分、呆れ半分の視線を向けていたが、
「ま、確かに」
「これぐらいは当たり前か」
ふっと口元を緩めたルイズとキュルケは、士郎の手を取るとタラップを登り始めた。
「あっ、ずるいっ! 抜け駆けですっ!」
士郎の手を取ったルイズたちを追いかけるように、シエスタが走り出す。笑いながらヴュセンタール号に向かうタラップを駆け上るルイズたちの姿を仰ぎ見ながら、
「まったく、緊張感のない奴らだ」
不意に吹いた風に揺れる髪を手で押さえがら呆れた声で呟くアニエスの口の端は、しかし微かに弧を描いていた。
「ふむ、あなたがエーミヤ・シロウ殿ですかな?」
タラップから甲板に降り立った士郎たちに向かって、数人の部下を背後に出迎えたヴュセンタール号の艦長がまず最初に口にしたのがそれであった。後ろ手に胸を張った姿で立つヴュセンタール号の艦長の無遠慮な視線は、まるで士郎を品定めしているようであり。貴族でもない平民を自分の船に迎えることの嫌悪感を隠そうともしていなかった。
「ちょっと、その態ーーー」
「ああ、衛宮士郎だ。よろしく頼む」
あからさまな態度に食ってかかろうとするキュルケの前に出た士郎は、微妙に間違った呼び方
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