第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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アニエスの下に届いた手紙には、士郎を迎えるための船がロサイスに来ると書かれていた。迎えは直ぐに向かわせると手紙に書かれていたことから、アニエスは陛下からの迎えを待たせていけないと主張。そのため、ウエストウッド村を出た士郎たちがまずしたことは、機動力の確保であった。森を出た士郎たちは、直ぐに近くの村で馬を人数分確保。手に入れた馬はお世辞にも良馬とはいえなかったが、使い潰す勢いで走らせたことから、日が落ちる前にはロサイスになんとか着くことは出来た。
士郎たちがロサイスに入る頃には、空の上のどこを見ても太陽の姿はなく。代わりに双月の光が淡く世界を照らし始めていた。ルイズたちが士郎を探しに来た時と同じく、ロサイスは夜だというのに相変わらず混雑を極め。あちらこちらで開かれている露天からこぼれる明かりや、娼婦や酒屋が人を呼び込む声で喧噪に溢れていた。そんな中を士郎たちは、人混みをかき分けるように進み、迎えが来ると思われる桟橋に向かってみたはいいが、何隻もの船が停泊する中に、迎えと思しい船の姿はなかった。桟橋にいる者に話を聞いてみると、トリステインから来た船は今日は商船しか来ていないとのことで、どうやら迎えはまだ来ていないと分かり。今日のところはルイズたちが以前ここロサイスで一泊した元連合軍司令部の前での野宿となった。
休みなく馬を走らせた強行軍により、ルイズたちの体力が限界を超えていたことから、恒例の士郎が何処で寝るかといった騒ぎは起こらず。士郎にとっては、ルイズと再会してから初めての安らかな夜となった。
翌日、いつものように日が昇る前に目を覚ますと、人気のない所で日が昇るまでの鍛錬をし終えた士郎は、開き始めた露天商から朝食の材料を買いながらルイズたちの下へ帰る途中、何気なく空を見上げた先に、異様な風体の巨船を目にした。士郎の他にもその巨船に気付いた者たちが、空を指さしながら何やら騒ぎ始め出す。
そんな中、騒ぎ立てる人の誰かが言った「何処の船だ?」と言う言葉を耳にした士郎は、夜明けの微かに赤みが残る空を飛ぶ巨船を目を細めながら見上げ、
「ーーーヴュセンタール号」
小さく呟いた。
ハルケギニア中から集まった商船や軍船など、様々な船が舳先を並べるロサイスの桟橋では、今、一隻の船を見ようと集まった人で溢れかえっていた。
百人は越える見物人が見つめる先にある船で、まず目を引くのはその大きさ。
鉄塔のような桟橋から伸びる橋げたに吊り下げられ、時折吹く風に揺られるそれは、周りに浮かぶ他の船の倍はあろうかという大さはあった。しかし、ただ大きいと言うわけでは、船の展覧会と言っても良いほど様々な船がハルケギニア中からやって来るロサイスでは、そう珍しいものではない。では、何がこんなにも人を呼んだのかというと、それは寄木細工のよ
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