崑崙の章
第8話 「ともあれ、大儀であった!」
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
答えてくれないし……
「ええと……と、ともかく。匂い以外は問題ありませんので、お話をどうぞ」
「う、うむ……」
若干引き気味の劉表が、頷く。
「ともあれ、今回のことで錦帆賊の残党は一掃された。しばらくは江賊も現れまい。その残党どもの処遇だが……」
劉表はちらっと桔梗を見る。
桔梗は、少し硬い表情のまま無言で目を閉じた。
「残党どもは全員打ち首。頭目も同様じゃ」
「「「………………」」」
俺も、紫苑も桔梗も、無言で通す。
この裁可を厳しいと思うだろうか?
現代ならばそうかもしれない。
人はやり直すことが出来る、そういう道徳的観念が発達した現代ならば、そういう思いもあるだろう。
だが、ここは千八百年以上の昔。
農民は竪穴式住居に暮らし、稲作も原始的農法で始まったばかりの時代。
民主共和制どころか、立憲君主制などという立法形式すらまともに定まっていない時代。
支配する側と支配される側という、両極端の立場しかない時代。
そして命が食料よりも安い時代なのだ。
……まあ、一刀の作った世界だから、多少おかしくはなっているようだが。
「……正直、水軍増強の為に懐柔してはどうかという意見もあった」
劉表が呟くように話し出す。
「だが、甘寧の件もあり、儂は江賊を信用できん。江賊どもも、儂に仕える気はないそうじゃ。当然じゃがな」
「……そうですか」
「今日の夕方にも全員の首を刎ね、長江に晒すつもりじゃ」
そう言って、劉表は再度桔梗を見る。
「異存はないかの、厳顔よ」
「……ございませぬ。賊はそうなってしかるべきものゆえ」
そう言って平伏する桔梗。
俺は、その姿に桔梗の武人としての覚悟を見た気がした。
たとえ、自身の縁であろうとも、信賞必罰を以って事にあたる。
今の桔梗は太守として……私人でなく、公人として他国の地にいる。
ゆえに、公人としての立場での言動が求められる。
彼女は……巴郡の太守なのだから。
「そうか……では、予定通り執り行う。この話はこれで終わりじゃ」
そう言って、指示書に落款を押す。
その書を文官に手渡して、その文官が部屋からでた時、全ては決定された。
その間、桔梗は……ただの一度も顔を上げなかった。
「さて、次の件じゃ。なしくずしに黄忠が白帝城の太守になっておるが……あらためて聞こうと思う。黄忠よ、お主はこのまま我が下に留まるか?」
劉表が紫苑に尋ねる。
俺の策謀により、彼女は現在の白帝城太守となっているが、それはあくまで臨時措置。
これからも白帝城の太守でいることを是とするならば、いろいろな問題となるだろう。
だが、まあ……俺はその点
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ