二十 詐術
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した頭で横島は声を絞り出した。
「ど………く……?」
「気づかなかったのか?左足を見てみろ」
その言葉に、無理やり首を動かし己の左足を見遣った横島は顔を顰める。左足にはどす黒い色の切り傷がひとつ出来ていた。
(……………あの時のかっ)
先ほど投げつけられたクナイの一本が左足を掠った事を思い出す。大したことないと気にも留めなかったがまさか毒が塗られていたとは。
視界が翳む。頭を振ってなんとか身体を起こそうと腕に力を入れるが、身体は一向に動いてくれなかった。
「即効性の毒にしては時間を食ったな」
「しかし奇妙な術を使う奴だ。あのような防御、見た事がない。日向の絶対防御か?」
「なんにせよコイツは音隠れに連れ帰る。大蛇丸様にお渡しするのだ」
頭上から聞こえる声に横島はギリギリと奥歯を噛み締める。世界唯一の文珠使いと謳われてもこの世界では忍者一人に勝つことすら出来ない。冷たくなっていく指先で地面を引っ掻き、そうして弱い自分に嫌悪した。
仮に真剣に闘えば横島は忍者に引けを取らないだろう。しかしながら横島はあくまでゴーストスイーパーである。妖怪や悪霊といった人外と闘う事はあっても、人間と闘う事は皆無に等しい。だから忍者と言えど霊能力者ではない人間と闘う事に横島は戸惑っていた。
人外の者でも倒すという事に罪悪感を感じてしまう彼は、明らかに人間である忍者を倒す事に抵抗を感じ、無意識に力を抑えてしまう。それ故、何れも横島を殺す事に躊躇を感じない忍者達に対し、横島は相手も自分も傷つかずに終わらせる事を最優先とする。自身がいくら惨めに見えたとしても逃げの一手に走るのだ。現に今文珠という万能な能力を駆使しても彼は逃げる事しか頭にない。
文珠が万能と言われる云われは不可能を可能とするところである。たとえば存在そのものを消滅させるなどという理論上不可能な事が、文珠の【消】や【滅】の一文字で覆される。
簡単なモノだと【死】の一文字入れただけで相手は死に至るだろう。けれどそういった考えを横島は微塵も思い付かなかった。加えて混乱するあまり【眠】の字すら彼は考えつかなかった。
その上横島は未だに霊能力の基盤が〈煩悩〉だと思い込んでいる。守りたいと願う事こそが力の源なのだとは知らずいつも通りに霊能力を扱う故に、文珠の威力は半減。更に文珠という万能な能力にばかり甘えていた彼は忍者の基礎である体術や剣術が一切出来ない。そして一度道化を外してしまったために[横島忠夫]特有のトリッキーな動きも今やキレが無い。
ストックしていた文珠はもうない。生成することは出来るが時間がかかる。
朦朧とする頭と痺れる全身は拳に霊能力を込める事すら許さない。…………手詰まりだった。
逃げる事に夢中で気づかなかったが、今い
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