二十 詐術
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静を装う忍者達と比べ、表面上涙目で喚く横島の内心は冷静に状況を判断している。クナイの雨も、動揺しつつストックしていた文珠で【壁】を創り、身を守ったのだ。尤も頭の奥では冷静でもやはり横島の心臓はバクバクと激しく鼓動していた。
「侮れん奴だ。気をつけろ」
「遠距離が駄目なら近距離だな…」
益々警戒し、じりじりと近づいてくる彼らの姿を視界に入れ、横島はたらりと冷や汗を掻いた。
予め生成していた文珠は五つ。【隠】【糸】【水】そして今使った【壁】にて残りの文珠はあとひとつ。
[栄光の手]とサイキックソーサーで凌ぐしかない。
右手に霊波刀、左手にサイキックソーサーを携える。その様はまるで騎士のようだったが、如何せん本人はへっぴり腰である。視線を彷徨わせる姿は自信の無さが窺え、音忍達はその情けなさを嘲笑した。
音忍の一人がひゅっと手裏剣を投げつけた。頭を下げてその手裏剣をかわす横島。そのまま彼は恥も外聞も無しにわたわたと四つん這いで這って逃げるが、先回りした音忍が横島の顎を搗ち割らんと蹴り上げた。
「うひょおっ!?」
突飛な声を上げながらもその足を仰け反る事で避ける。そのまま横へ転がる横島に向かって音忍が踵落としを繰り出した。それを回避し立ち上がった横島目掛けて、音忍の一人がクナイを数本投げてきた。
「わっわっ…ととっ」
タップダンスをするかのように横島はそれらクナイを避ける。だが避け損ねたクナイの一本が横島の左足を掠った。
「……ッ」
鋭い痛みを感じながらも、彼はサイキックソーサーを投げた。サイキックソーサーは弧を描いて、音忍達の頭上を通り過ぎていく。
「どこを狙っているんだ?」
せせら笑う音忍の頭上でバキッと音がした。その音にはっと振り向く彼らの眼に、後方の木の幹が倒れてくるのが映る。サイキックソーサーにより切断された太い幹は、重力に従い音忍目掛けて落下してきた。
「!?これを狙ったのか!」
一瞬驚愕の表情を浮かべた音忍達。しかしすぐに彼らは馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「だが遅い!」
易々と木の幹を避けた音忍は、横島が立っているであろう場所に目を向ける。だがそこには既に彼の姿は無かった。
「な…待て!!」
木の幹に注意がいっている間に、横島はその場から全力疾走していた。彼の後ろ姿がまるで豆粒のように小さく見える。だがまだまだ忍びの足には敵わなかった。
急ぎ跳躍して木から木へ飛び移りながら横島を追い駆ける音忍達。あっという間に横島の頭が視界に入った彼らは手裏剣を投げつける。
「うおわ!?」
突然降ってきた上空からの手裏剣に行く手を阻まれ、横島は足を止める。再び木から跳び降りて来た音忍に囲まれ、彼はぐっと息を呑んだ。
「いい加減にしろ。どうせ
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