暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第二八幕 「母の愛した愛し子よ」
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くれた両親にそんな薄情な思いを抱く、そんな自分がひどく自分勝手で腹立たしかった。
母は「家族」という言葉を強調することがよくある。その言葉を聞くたびに、私は表面上笑いながらも心の内では後ろめたい思いを抱いていた。いや、違うかもしれない。今になって思えば、その言葉を強調されるたびに「母は実はすべて気付いているんじゃないか」と怯えていたようにも思える。お前は嘘つきだ、と。
「・・・考えすぎか。母さんはそーいうの気にしない人だって知ってるくせに・・・自分に自信がないからそんな弱気なこと考えるんだよ」
偶に思うが、ひょっとして自分はかなりの馬鹿なのではないかと思う。まぁ冷静に考えてみれば転生どうこうと考えている時点で頭がおめでたい人な訳だが。レッツゴートゥ精神科する気はないので結局のところ現状維持だろう。
そんなことを考えていると、台所から何とも食欲をそそる匂いが漂ってきてそちらに意識が行く。この匂いは・・・玉ねぎを炒めている時の匂いだ。玉ねぎとはどうして炒めたらこんなに食欲をそそられるのだろうか。・・・単にカレーも肉じゃがもハンバーグも玉ねぎを炒めるところから始まるのを脳が覚えている所為かもしれない。いわゆる条件反射?急激に唾液の分泌が増加した私はつい母さんのいる台所に声を飛ばした。
「かーさん今日の晩御飯なにー?」
「いいお肉が売ってたから今日は肉じゃがー!」
「前みたいに『ジャガイモ全部溶けちゃった!テヘッ☆』とかは止めてよー?」
「ちゃんとメークイン使ってるから大丈夫よ!っていうか文句言ってる暇があったらお皿出しなさーい!」
「あいあいさー」
「女性士官に使うときは“アイアイマム”よ!覚えておきなさい!」
「どーでもいーよー・・・」
うん。このどうでもいいところで突っ込んでくる辺りは実に母さんだ。そして食べ物の匂いにつられてさっきの悩みを忘れている辺り、やっぱり私は馬鹿だ。
だけどまぁ、ちょっとぐらいおバカなほうがこの世界を生きていくには丁度いいのかもしれない。
「早くしなさい味見係ー!」
「はいはい只今〜!!」
その後少しして父も帰って来た佐藤さん一家は、晩御飯を食べながら一家団欒の時を過ごした。肉じゃがは少し煮込み過ぎて肉が固くなってしまったが、良くあることだと誰も気にしなかった。
それは誰がどう見ても、日本ではありふれた“家族”に相違なかった。
でもそれで十分だろう。本当の家族かなんて、その光景の前には些細なことだ。
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