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ヘンゼルとグレーテル
第一幕その六
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第一幕その六

「それは」
「冠よ」
 見れば白い花と茎で作った冠です。白と緑で凄く奇麗です。
「これ、あげるわ」
「いいよ、そんなの」
 けれどヘンゼルはそれを断りました。
「どうして?」
「それは女の子が着けるものだよ。男の子は着けたりしないよ」
「そうなの」
「そうさ」
 ヘンゼルは男の子としてグレーテルにこう言いました。
「じゃあ私が着けていい?」
「ああ、いいよ」
 ヘンゼルはそれに頷きました。グレーテルはそれに従い冠を頭に被ります。
「どうかしら」
「よく似合ってるよ」
「本当に!?」
「ああ。まるで森の女王様だよ」
「そうなの、よかった」
 そう言われてついつい顔に笑みが浮かびます。
「苦労して作った介があったわ」
「そして森の女王様にプレゼント」
 ヘンゼルは妹に側に置いてあった花束を差し出しました。グレーテルの冠と同じく森の花で作った花束です。
「まあ」
「これでもっと女王様らしくなったね」
「有り難う。けど」
「お腹は満腹にはならないね」
「女王様も食べないとどうしようもないわ」
「それじゃあ」
 二人の目は自然と野苺に向かいました。
「食べないか?」
「けどそれは」
 お母さんに夕食にするように言われていたものです。けれどもう二人は空腹に耐えられなくなっていました。
「いいじゃないか、また集めれば」
「そうね」
 今度はグレーテルも我慢できませんでした。お兄さんの言葉にこくりと頷きます。
「食べよう、野苺はまだ森に一杯あるし」
「ええ」
 まずは一粒取りました。そして口に入れます。
 また一粒。そしてまた一粒。とてもお腹が空いている二人はムシャムシャと食べはじめます。
「美味しいね」
「うん」
 どんどん食べて、遂に野苺はなくなってしまいました。二人もお腹一杯になってしまいました。
「美味しかったね」
「ええ」
 二人は笑顔で頷き合います。
「けれど」
 しかしここでヘンゼルは辺りに気付きました。
「もう、真っ暗だよ」
「そうね。どうしようかしら」
「帰ろうか」
「けれど。道も真っ暗でわかりはしないわよ」
 グレーテルが言います。
「どうすればいいかしら」
「怖いのかい?」
「ええ」
 お兄さんの言葉に素直に頷きます。
「ここにいるのも帰るのも。どうしたらいいの?」
 森には熊や狼がいるのです。そうした獣達のこと、そして化け物のことを思うと怖くて仕方がなかったのです。グレーテルは震えていました。
「道、わかる?」
「いいや」
 ヘンゼルは首を横に振りました。
「夜だから。目印もないし」
「じゃあここで一晩過ごすの?」
「それしかないみたいだね」
「そんな」
 グレーテルはそれを聞いて顔を真っ青にさせ
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