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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
一抹の激突
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た。同時に、まずい、と苦々しく思う。
距離を取られた。それはつまり、ワイヤーという中、遠距離用の武器を持つ者に対して、近距離専用武器しか持たない者には死刑宣告に等しい。
そうサラマンダーが思考している間にも、ヒン!という小さな小さな風斬り音。
「くそっ!」
悪態を吐いてごろごろと真横に転がる。ピシリ、と耳朶を打つ音。恐らく、先刻まで自分がいた地面が一閃された音だろう。
バケモノめ、と思う。
いや、バケモノでなければケットシーの最終兵器とまでは言われないだろう。
《
終焉存在
(
マルディアグラ
)
》
自分に終わりを来させるのではなく、自分の前に立ちはだかる全てを終焉させるという意を込めて献上された二つ名。
およそ二ヶ月ほど前。突如流星のようにケットシー領に現れた希代の実力者と歌われる一人のプレイヤー。当初、ケットシーがそのあまりの力に恐れをなして、がんじがらめに閉じ込めようとしたほどだと聞いていた。
やがて、自分と同じような実力者を集め、ドラグーン隊と並び立つほどの軍隊、フェンリル隊を自らの手で立ち上げた。
しかし、せっかく立ち上げたフェンリル隊の指揮権を副隊長に譲り、当人はいつもふらりと各地を放浪していると言う噂を聞いたことがある。
聞いた時、どうしようもなく怒りが湧き上がった。立ち上げた隊を放って置く無責任、己の種族に貢献しない非従属心。
何より、力を無駄遣いにしていることに対して。
「負け……られん。…………貴様に、だけは……………」
みしみし、と軋む身体を起こしながら、地の底よりもっと深い場所から響いてくるような声で、《猛将》と呼ばれるサラマンダーは呟いた。
同時に、視界が仄かに紅く染まってくる。気のせいでない証拠に、空の青色と合わさって空一面が紫色に変色してしまっている。
しかし、そのことをサラマンダーはほとんど意識していなかった。
心に浮かぶのは、かつて経験したこともないほどの高揚感。真の強敵と会ったときのみに訪れる感覚。
自然と口角が持ち上がる。口元に磨り潰したような笑みが浮かぶ。
キイイィィィィーン、と脳裏で金属を引っかいたような音が鳴り響く。しかし、不思議とその音は不快ではない。
視界の中の全てのオブジェクトがほんの少し引き伸ばされ、放射状に後ろへ流される。さらに続く現象として、周囲のそよ風になびく背の低い草の動きが少しだけその動きを緩ませた。
ゆらり、と大柄な身体から緋色の煙のようなものがゆっくりと立ち昇る。
それを見た途端、上空に浮かぶ少年の顔色が変わった。
その眼に浮かぶのは、驚愕だろうか。
ヒヒュン、と勢いよくワイヤーを回収するために腕を振りつつ、レンは内心が零れ落ちたというようにぽつりと言う
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