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ヘンゼルとグレーテル
第一幕その二
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第一幕その二

「だから飲んだら駄目よ」
「そうだね。けどさ」
「何!?」
「中を見るだけならいいだろう?一滴も飲まないからさ」
「それならいいんじゃないかしら」
「それじゃ」
 彼はそれを受けてミルクの壺を覗きました。するとそこにはクリームが浮いていました。
「グレーテル」
 ヘンゼルはそれを見てすぐにグレーテルに声をかけます。
「見てみなよ、クリームが浮いているよ」
「駄目よ、食べたら」
 妹はまずは悪いお兄さんを注意しました。
「それを食べたらお母さんカンカンよ」
「カンカンかあ」
「そうよ。だから離れて」
 お兄さんに対して言います。
「今は我慢しましょう」
「けれどなあ」
 まだ壺を覗いています。諦められないのですね。
「とても美味しそうだよ」
「それでも駄目よ」
 妹は厳しいです。やっぱりしっかりしています。
「夜まで待ちましょう」
「夜までまだまだあるのに」
「じゃあ遊びましょうよ」
「何をして?」
「踊るとか」
 ヘンゼルは何気なしにこう提案しました。
「踊るの?」
「そうよ。それでお腹が空くのを忘れましょうよ」
「けれど踊ったら余計にお腹が空くよ」
「それはそうだけれど」
 しかしつまみ食いをするよりはましだということです。
「それでも今は踊りましょうよ」
「どうしても?」
「ええ」
 グレーテルは言いました。
「ほら、こうやって」
 早速足をトントンとステップさせます。
「こうしてね」
 次に手をパチパチと叩きます。
「こうして回って。これでどうかしら」
「こんな感じかな」
 ヘンゼルは壺から顔を離して今の妹の動きを真似しはじめました。
「まずは足を」
「そうそう」
「そして次は手を」
「そうよ、いいわ」
「で、こうやって回って。こうなんだね」
「上手いじゃない」
「へへっ、どんなもんだい」
 胸を威張って言います。如何にもお兄さんといった態度です。
「じゃあ次はね」
「まだあるの」
「踊りはね、色々あるから踊りじゃない」
「それはそうだけど」
 まだ覚えなくてはならないことがあるのかと内心閉口してしまいましたが口には出しません。
「まずは首を」 
 左右にコックリコックリと動かします。手は腰に置いています。
「で、手の指を」
 次は手の指を動かしはじめます。
「こうやってね」
「こうやって?」
「そうよ、難しくないでしょ」
「うん、まあね」
 妹に上手く合わせています。
「それで手を組んで」
「うん」
 兄と妹は肘で腕を組みます。互いに反対の方を見ています。
「それで回ってね」
「一人じゃ出来ない踊りなんだね」
「そうよ」
 妹は笑顔で頷きます。
「二人いないと駄目な踊りなのよ、これは
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