マザーズ・ロザリオ編
転章・約束
黎明
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殺してない。……螢は悪くないんだ。ボクが……ボクが謝りたいのは、過剰に期待して、螢を追い詰めた、ボク自身の事。だから―――、」
聞きたくなかった。自分が赦される言葉など。そんなものを聞かされても生き地獄なだけだ。しかし、木綿季の言葉は容赦なく耳に入ってくる。
「ごめんなさい。もう、無理しなくていいよ」
――ああ
「苦しまないで」
――やめてくれ
「これからは―――」
――どうして
「―――ずっと、一緒に居よう?」
――君はそこまで優しいんだ
木綿季の心が伝わってくる。暖かな、落ち着く、心地のいいものだ。
「ボクは、生きてるよ」
「…………………」
「螢は会いに来てくれたね」
「…………………」
「……約束。―――助けて」
「……ああ。もちろんだ」
仰向けのまま、木綿季を抱き締める。あの時より強く、確かな想いを込めて。
この小さな少女は赦してくれた。
生き地獄だと思わせすらせずに、暖かく、迎え入れてくれた―――、
「螢……」
「……うん?」
「―――――」
―――彼が思いもよらなかった、驚きの言葉と……行動と共に。
体を硬直させ、必死に頭を働かせようとする。言われた言葉の意味と、口許に残る、仄かな温かみの意味を理解しようとして。
木綿季はスッ、と顔を上げると、僅かに頬を染めながら呟いた。
「……あの時の仕返しと、ボクの気持ちだから」
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