マザーズ・ロザリオ編
転章・約束
黎明
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24層主街区パナレーゼ
少し前までユウキが辻デュエルをしていた湖の畔に到着すると、アスナはそこに留まった。俺はそのままゆっくりと飛んでいき、デュエルのフィールドだった小島に降り立って巨大な樹に向かって歩き出す。霧のかかった朝の空気の中、静かにたたずむ濃紺の髪の少女。
「ユウキ」
「螢……っと、こっちではレイだったよね」
「今はいいよ。俺は螢として木綿季に会いに来たから」
「……うん」
一歩ずつ彼女に近づき、1メートル程の距離を空けて立ち止まる。
そして、ようやく向き合う覚悟が出来た相手、ユウキに俺は長い間心に溜め込んでいた言葉を口にした。
「ごめん。約束、全部は守れなかった」
たった一言。
されどそこに込められた彼の懺悔、後悔、謝意は何よりも重く、意味の深いものだ。
そして、さといユウキは分かっていた。
彼が、どんなに頑張っていたかを。
世の中は結果を伴ってこそその過程を評価される故に、木綿季は螢を糾弾する権利があった。
何故最初から彼女の両親を助けようとしてくれなかったのか。同じ待遇だったはずの姉だけ、何故先に逝ってしまったのか……。
彼には彼の事情があり、そもそも当時の彼は精神的に幼く、その均衡の限界が近かった。
しかし責任を負った以上、それは果たされるべき人としての責任だった。
螢は長い間、この時を待っていた。
何よりも大切で、自分の全てを投げ打ってでも助けたいと願った少女から拒絶され、断罪の言葉を言われる事を。
―――それで全てが終わる。哀れで中途半端な『水城螢』は消え去り、暗闇に生きる人間の『水城螢』が生まれる。
もう『日常』には戻らず、逆らわず、ただ襲い来る敵を打ち破り、何度目か知れぬ戦いの中で死に、忘れられていく。そんな存在になることを彼は望んだ。だから―――、
「……ぃ……螢っ!!」
小さな体が目にも留まらない速さで彼に飛び付き―――、
「なんで……何で、謝るの?螢は何にも悪いことしてない。……ボクの方が、螢の事を縛ってるとおもってたのに!!……謝らなきゃいけないのは、ボクだよ!!」
彼にとって、思ってもいなかった言葉を聞いて、絶句する。
バランスを失った体は地面に倒れ、仰向けの体の上には小柄なユウキの体が乗っていた。
訳が分からなかった。どうして木綿季が謝るのか。木綿季が俺を縛っていた?
違う、俺が自分で自分を縛ったのだ。しかも緩めに……僅かばかりの自由すら自分に許して―――、
「……俺は、ランを、お母さんとお父さんを、助けなかった。木綿季の家族を、殺したんだぞ?俺が悪くない?……どうしたら、そんな風になるんだよ!?」
「違うよ!姉ちゃん達が死んだのはウイルスのせいだよ!……螢は
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