マザーズ・ロザリオ編
転章・約束
黎明
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橋先生だ」
「始めまして。倉橋と申します。結城さん、よく訪ねて来てくれました」
「は、始めまして。こちらこそ急に無理を言ってすいませんでした」
「いえいえ。丁度今日は主治医の方が見えているから、今日の午後は非番なんですよ」
主治医と担当医の違いに気がつかなかった明日奈はチラリと螢の方を見た。
そこには何故か青ざめて、頬をピクつかせる螢が居た。
「主治医……木綿季の、ですか……?」
「何を言っているんだい螢君。当たり前じゃないか。雪螺先生以外に誰が居ると言うんだい?」
「……どうしよう。帰りたくなってきた」
「な、何で?」
突如にしてぞわぁ、と黒いネガティブオーラを出し始めた螢に慌てて問いかけると、彼は心底嫌そうに答えた。
「木綿季の主治医のフルネームは『水城雪螺』。俺の、母親だ」
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水城雪螺。某T大学医学部を首席卒業後、外国へ留学。各地で医療を学び、帰国後、結婚し一子をもうける。
以後、国内のあちこちでゼロコンマ以下の成功率の難手術、治療を成功させ、『神医』と言われるようになった。
現在は治療不可能とされる感染症『AIDS』の研究を行い、少しずつ結果を出している。
「水城先生の研究によるAIDS治療法は理論上もう確立しています。……ただ、まだ正式な認可が下りていないために治療は始まっていません」
倉橋医師はもどかしそうに明日奈に告げた。場所は移って病院最上階【第一特殊計測機器室】
―――《絶剣》ユウキ、紺野木綿季の『病室』前だ。
螢の家に押し掛けたその夜。彼が語った2人の昔話は決して綺麗なものばかりではなかった。
水城螢を灰色の世界から救い、生きる意味を与えたのは、木綿季だった。今の彼は木綿季から貰い、彼女の言葉が彼を『日常』に繋いだ。
そして今日、明日奈は最後のピース、木綿季と螢の『秘密』を知った。皆の為に強くあらんとする少女、そして彼女の為に日常を捨てて、影に生きた少年。2人は漸く再会を果たした。
「………………」
木綿季はベットから起き上がり、ガラス越しに螢と見詰め合っていた。
本来だったならば、木綿季は様々な感染症で起き上がるのも儘ならないはずだったが、目の前の彼女はその愛らしい顔を綻ばせ、螢を見ていた。
木綿季は免疫力が落ちたところを肺炎にかかり、そのまま入院した。AIDSの恐ろしいところは1つの病が完治しても体内の菌から次々と感染症に掛かってしまうことだ。おまけに木綿季のウイルスは《薬剤耐性型》、対AIDS用の抑制剤が効きにくい厄介なものだった。
しかしそんな時、驚くべきとこから助けの手が
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