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王道を走れば:幻想にて
幕間+慧卓:童貞 その1 ※エロ注意
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 にやけたミシェルの顔を見ると、どうにも今夜は根掘り葉掘り聞かされそうだと否応なしに確信させられるようで、慧卓は早々に諦観を覚える。

「本当、ありふれた話だからな?」

 そう前置きして慧卓は語っていく。自分の故郷における恋愛の馴れ初めと、卒業についての話を。


ーーー慧卓の回想、召喚より一年前の初夏ーーー



 慧卓は空冷の利いたバスを乗り継ぎ、勤木市の境を乗り越る。機械技術発展の弊害より逃れた清き小川が市の境となっており、バスの窓越しに川で水遊びに興じる人々が見え、その一部が目の保養となった。だが底が浅い川とはいえ、事故に遭遇しないように気をつけて欲しいものだ。バスを降りる頃には空は茜色から紺青へと変じており、日の光が空から離れていく様子が見て取れる。風は緩やか、微温湯のような億劫な空気を運んでくれる。
 勤木市にとって日常風景であったリーマンの波も、絢爛としたネオンの光もこの市、寄木市にはあまり懐かぬ光景のようだ。何処か閑散として、寂寥にも似た雰囲気を漂わせる街並み。目に映るのは小所帯の家の数々、背の低いマンション、家族の変遷を見詰めてきたであろう古いアパート。そして住居の合間合間にひっそりと、美容院やクリーニング店・靴屋、酒屋・惣菜店、そして墓地等が並んでいた。市の中心に出れば風景も多少現代らしい顔付きとなるが、それでも勤木市の喧騒に比べれば寧ろ慎ましい姿といえよう。その街の一角に、実晴の住居があるのだ。
 学生服のまま、背にバッグを背負ったまま慧卓は歩く。インターネットの航空地図などで場所を確認しているため、間違える事は無い。アパートとアパートに挟まれた道路を歩き、四つ目の交差点を右に曲る。酒屋を過ぎたT字路を左に曲り、そのまま真っ直ぐ進めば、真正面に実晴の家が現れる。
 遥か昔、昭和の時代劇に出て来そうな、木造一階建ての見事な和風の家宅だ。といってもブロック塀に囲まれた唯の小さな一軒家なのだが。垣根と玄関までに拵えられた割かし大き目の庭。景観を穢さぬ白い壁と引き戸。それに加え瓦屋根ですら慧卓の目にとっては珍しい光景であった。『千川(せんがわ)』という字の羅列が大理石に刻まれ、家の標識となって掛けられていた。
 ピンポーンとチャイムボタンを鳴らし、慧卓は声を掛ける。

「実晴っ、俺だけど!」
『はいはいはーい!今鍵を開けるよー!』

 とたとた、フローリングを駆ける音の後、戸の鍵が開く。引き戸が開かれたその先に、目をきらきらとさせた美少女が存在していた。

「よくきたなー!さ、早く入れ入れー!」
「お、おう。お邪魔します」

 今日の実晴は溌剌男勝りキャラで行く気らしい。性に近いだけあってやりやすそうだ。慧卓は中に入って戸を閉めると、まじまじと実晴の格好を見詰めた。

「どうしたの?」
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