暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが? 
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った。
 コーデリアとアリッサが訝しげに首を傾げる一方で、慧卓は嗚呼と溜息を漏らす。矢張り、あの恐ろしき食材の投入は見間違いでも何でもなかったのだ。

「・・・パック・・・俺の墓標に・・・彼女を愛していたと・・・」
「・・・・・・ごめん・・・俺も・・・無理・・・」
「・・・つ、妻の料理と・・・比べものに・・・」

 三人の兵隊が頭から、ばたりとテーブルに突っ伏した。ただ一人、熊美だけが瞳孔を獣のように開きながら、込み上げる絶叫を耐えていますといわんばかりに口を鉄門のように閉ざしていた。アリッサはわなわなと口を震わせて言う。

「そ、そんなに酷いのか?わ、私のパイ・・・そんなに不味いか?」
「食べてみれば分かるわ。食べなさい」

 有無を言わさぬ冷徹な恫喝と共に、彼女の前にパイが置かれた。その狐色の生地の断面を見てアリッサ、そしてコーデリアは愕然とする。表面の林檎の鮮やかさとはまるで正反対の、病的などどめ色をした中身が見えていたのだ。まるで病魔の巣窟を思わせるように、多種多様な食材が混沌とした様子で混ざり合い、それぞれの実に蜘蛛の巣のように絡みついている。
 アリッサは恐る恐るパイを裂く。ナイフを伝う感触もどこか歪でパイを裂くとは思えぬ粘着質な感じがするが、彼女は耐えてそれを頬張る。初めの食感としては中々悪くないのだが、味は最悪であった。全身が総毛立って目が裏返るような、奇怪で意味不明で、そして味わう者に畏怖を感じさせる味なのである。最早それは食事というよりかは、拷問食といっていい程の劇物ぶりであった。

「な、なんだ、これは・・・!?まるで、騎士見習いの時に食べた、腐乱した魚の内臓だ・・・何故だ・・・見た目は一緒なのに・・・なぜ、こんな・・・」
「林檎とレモン、豚の尾っぽにテーブルビート、ニンニク、葡萄の皮に、それに何が原料なのか分からない香辛料」
「?」

 慧卓の諦めきったような声が続けた。

「アリッサさんが鍋に入れたものですよ。使われたものを調べたらわかりました」
「あ、アリッサ・・・さすがにそれはやり過ぎですよ?私の時を真似て作ったのかもしれませんが、あれはちゃんと料理番の人と相談して作ったパイですからね。闇雲に食材を投入した訳ではありません」
「手伝ったのは鍋で煮る所くらいでしょう?どうしてそれだけでこんなに差が開くのか、人間の感性というのは分からないわね。というか、食材をこんなに無駄に乱用するなんて、あなた何を考えているの?恥を知りなさい」
「そ、そんな・・・コーデリア様・・・クマミ様・・・。私は、ただ料理が美味しくなればと思って・・・」
「言い訳になりません。あなたが作ったものは、不味い料理なんですから!」

 コーデリアの裁判官染みた宣告に、アリッサは目を大きく開いて衝撃を受け、涙を目端
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