暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア、アリッサ:おやつはいかが? 
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判断したのだ。アリッサは釜戸の内から器用に陶器を取り出す。はたしてアップルパイの生地には、狐色のこんがりとした焼き色が付けられていた。網の間からは芳醇な味わいを予感させる林檎が見えて、程よい熱加減によって果実は焼かれ果汁を流しており、火によってパイ生地に固着している。熟れた果物独特の鮮やかな薫りが漂っているが、その中にレモンの爽やかな薫りが混ざっているのに気付く。これは口にすれば、とても良い味わいと風味を愉しめそうである。
 慧卓が驚いた点として上げるならば、どちらの陶器に入ったパイも、見た目としてはとても美味しそうなのである。一方のパイにはアリッサが好き放題に食材を投入してあるのに、それは何処へ埋没しているのか。

「いい焼き具合ですな、王女様」
「ええ。どちらもとても美味しそうです。さぁ、皆さんが待っていますから、これを小分けにしましょう」
「はい」

 嬉々とした様子で、コーデリアとアリッサは自信作の盛り付けを始める。穢れの無い白雪のような小皿に盛り付けられるパイは、実に食欲を旺盛にさせる外見であった。
 皿を盆に乗せて厨房から出て、宿に戻ると、テーブルで待っている客らが迎えてくる。ミシェルとパック、ハボック、更に熊美であった。

「お待たせしました。王女殿下特製のアップルパイです」
『いよっ、待っていました!』『俺の甘党としての誇りが感じる・・・あれは逸品だ』『何故だろう。ケイタク殿が持っているパイを食べたら拙い気がするのだが』

 パックが甘党として磨かれた嗅覚を活用するようにすんすんと鼻を鳴らす。匂いだけでそれが逸品であるかどうか判別出来る事に驚きたい所だが、慧卓としては寧ろ、第六感で自分に迫る危機を悟るハボックを賞賛したい所である。経験豊かな騎士が言うのだから、もしや焼かれたパイのどちらかは劇物という事なのだろうか。
 四人の前にそれぞれパイが置かれる。目を輝かせるパックのために、慧卓は一応説明した

「林檎をふんだんに詰めて釜戸で焼いたアップルパイです。林檎にはドワーフ領産のサトウキビの黒砂糖とレモンの果汁を混ぜて豊潤さを高めまして、クリームには養鶏場で朝一番に取れた卵を使用しております。アリッサさんの御蔭もありまして釜戸の火加減は丁度良く、御蔭で実が崩れない絶妙の焼きとなりました」
「聞いてるだけで腹が減るな。じゃぁ、先ずこっちからいきますか」
「あっ・・・そちらはアリッサさんが具材を詰めたパイです。題して、『夢の島』といったところでしょうか」
「パイを島と例えるとは、詩人だな。では戴こう」

 熊美の言葉を契機として、四人はパイにナイフとフォークをさくさくと通し、口に運んだ。数回咀嚼して舌の上に実を乗せた時、四人の顔が石像のように硬直する。まるで急性的な疾患で心臓が止まったかのような急激な硬直であ
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